映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

棚園正一『学校へ行けない僕と9人の先生』

 僕が接している媒体だけかも知れませんが、ここ数年、夏休み明け近くになると「学校に行かなくても大丈夫だよ」というメッセージが広く発信されるようになってきました。
 今回は、そんな中で触れられていた漫画家の棚園正一さんの文章を読み、以前から作品を知っていたので、手に取って読んでみました。

 

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学校へ行けない僕と9人の先生 (アクションコミックス)

 

学校へ行けない僕と9人の先生 | WEBコミックアクション

 
あらすじWebコミックアクションより)
小学校〜中学校時代、不登校だった著者の実体験を基にした物語。学校へ行けない日々、「9人の先生」との出会いと別れを通じて、喜び、傷つきながら成長していく少年の姿を描きます。連載開始にあたり、少年が出会った9人目の先生、鳥山明先生よりコメントを頂きました。
「長い付き合いになるが、彼の過去を尋ねたことはなかった。不登校児だとは知っていたが、今回その頃を描いた漫画を読ませてもらい、ちょっと驚いてしまった。思った以上に漫画を描く事が彼を救っていたようだ」

勝手に五段階評価
★★★★☆

感想
 
著者の棚園正一さんが学校に行けたり行けなかったりして過ごしていた日々を描いた作品です。
 最後には『ドラゴンボール』の作者である鳥山明さんが出てくるということで、とても注目された作品です。

 本ではありませんが、同じような話としては、中川翔子さんがジャッキー・チェンに会う話に近いものを感じました(人生は『壮大なオールOK』にできるチャンスがある。 中川翔子さんが不登校経験者に語ったこと | ハフポスト)。

 作品の最後に鳥山さんが書いているように、普段ならファンに会うことはないのですが、棚園さんのお母さんと鳥山さんが同級生だったこと、そして、熱心に棚園さんと会ってくれないかとお願いに行った先生の働きかけで会うことが実現し、そこから「大丈夫」という自信を持った経験が描かれています。

 この、鳥山明さんに会う、とか中川翔子さんで言えばジャッキー・チェンに会うとか、「そんなのあり得るわけないじゃん」と一蹴してしまうことは簡単です。
 「たまたまこの人は運が良かっただけ」「この人は良かったけど、自分にそんなことが起きる訳がない」と僕も思います。

 けれど、「鳥山明」とか「ジャッキー・チェン」とかそんなすごく誰でも知っているような超有名人との出会いではなくても、「鳥山明」に会わせてくれないかと何度もお願いに行った先生のような存在が僕にはすごく印象に残りました。

 そして、これはこの作品ではなく、中川翔子さんの言葉ですが、一つだけオールOKの時が来る条件としてあげているが「死なないこと」です。
 僕も何度かしんどい思いや経験をしてきて、今が「オールOK」と言える情況とも言えませんし、生きていて「良かった」とも中々思うことは出来ません。

 けれど、「死なないこと」というのはそんな情況の中での一つだけの希望でもあります。
 死ななければいつか「オールOK」と思えたり、「幸せ」を感じることが出来るかも知れない。
 棚園さんのように鳥山明さんに会ったり、中川翔子さんのようにジャッキー・チェンに会うような出来事は起きないとしても、「生きてて良かった」と思える時が来て欲しいなと。
 それに必要なのは「死なないこと」。

 死ぬことばかり考える日もありますが、何とか今日も死なないで過ごしていきたいなと思います。