映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「みんなの学校」

 公開された当初から見たいと思っていた映画を5年越しで見ることが出来ました。
 どこで見たのかというと、地元の公民館です。
 たまたま実家に帰ったときに、自主上映会開催のポスターが貼られているのを見つけ、観に行こうと思うと母に話したら、母がボランティアで行っている障害者施設でも取り扱っているとのことで、そこで前売り券を買ってきてもらい、観に行きました。
 ちなみに、前売り券だけで満席になってしまったとのことで、前売り券を頼んでおいて良かったです。 

 

youtu.be

 

映画『みんなの学校』公式サイト


作品データ映画.comより)
監督 真鍋俊永
製作年 2014年
製作国 日本
配給 東風
上映時間 106分

イントロダクション(公式サイトより)
大空小学校がめざすのは、「不登校ゼロ」。ここでは、特別支援教育の対象となる子も、自分の気持ちをうまくコントロールできない子も、みんな同じ教室で学びます。ふつうの公立小学校ですが、開校から6年間、児童と教職員だけでなく、保護者や地域の人もいっしょになって、誰もが通い続けることができる学校を作りあげてきました。
すぐに教室を飛び出してしまう子も、つい友達に暴力をふるってしまう子も、みんなで見守ります。あるとき、「あの子が行くなら大空には行きたくない」と噂される子が入学しました。「じゃあ、そんな子はどこへ行くの? そんな子が安心して来られるのが地域の学校のはず」と木村泰子校長。やがて彼は、この学び舎で居場所をみつけ、春には卒業式を迎えます。いまでは、他の学校へ通えなくなった子が次々と大空小学校に転校してくるようになりました。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★★

感想
 舞台となる大空小学校は、大阪市にある新しく出来た小学校です。
 地域の子どもが増え、新しくできた小学校で、そこでの取組が話題となり、一年間の様子を追ったドキュメンタリーになっています。

 僕が見た同じ時期に、Facebookでつながっている方も観たということを投稿していて、その方との感想も含めながら、良いなと思ったのは、先生も1人の人間として描かれいることでした。
 校長の木村泰子さんは、開校式での出来事を語ります。
 そこでは、事前になんの情報もなく転校してきた子が走り回り、正直に「この子がいなければ」「良い学校を作ろうと思っているのに」と感じたことを語ります。
 また、教員2年目で初めて担任を持つことになった男性教師(正確には講師)が、生徒たちへの接し方に戸惑い、怒りにまかせて怒鳴り散らす場面がありました。
 それに対して、校長は、何故あんな大きな声を出す必要があったのか、彼のしたことは体罰であること、同じことをしたらクビだと伝えます。

 僕は、学校が好きではなかったという思いもあり(行かなくて良いと知っていたら行かなかった)、親としての立場も、そして、教師としての立場も経験しています。
 だからこそ、教師や親が1人で抱え込んでしまうこともよくわかります。
 「自分の子ども」「自分の生徒」。

 だけど、この映画というか大空小学校で描かれているのは、みんなが支える、みんなが見守るという姿です。
 その「みんな」には、学年問わず大空小学校に通う子どもたち、その保護者、教職員、地域の人たちです。
 その「みんな」で1人ひとりが関わろうとするから、今まで違う学校では通うのが難しかった子どもも通うことが出来るようになる。

 また、教員経験のある自分にとってとても素晴らしいと思ったのは、校長含め教職員が上から話さないということです。
 これは、朝会や卒業式の場面でも写っていて、校長は体育館の上段に立つことなく、子どもたちがいる同じ床に立ち、話をし、卒業証書を手渡します。
 教員と児童はもちろん対等な立場ではありません。
 けれど、教員が児童の側に立とうとする、近づこうとしていることを象徴するものだと感じました。

 校門で学校に入るのを渋る子どもに向かって、校長が呼びかけます。
 「○○がこっちに来るのと、私がそっちに行くのどっちが良い?」
 「どっちもイヤだー!」と叫ぶ子どもに向かって、「じゃあ、私が行くね!」と急いで向かいます。
 これも上段から話さないということと同じことなのだと思います。

 教師は、呼べば生徒が来ると思っているところがある。
 そして、自分の意見は正しいと思っている。
 校内放送で呼んだのに「何故来なかったんだ!」と威圧的に教師から言われている生徒を何人観てきたことか。
 
 また、教職員やこどもたちが良いところをすぐにほめるのも印象的でした。
 「偉い!」「すごい!」
 どんなに小さなことであっても、周りの人と比べたら「当たり前のこと」であっても、その子にとっての良い変化であればすぐに褒める。

 貧困などが垣間見えますし、大空小学校では良くても(受けいれられても)、中学校では無理(なので特別支援学校に進む)という厳しい現状も垣間見えますが、少なくともこういう小学校があるということ自体、そして、5年経った今もこの映画、大空小学校の取組に心揺さぶられ、自分たちでも実践出来ないかと試行錯誤している人たちがいるということがとても希望のあることだと感じます。