映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

原田マハ『楽園のキャンバス』

 3年前の年末、次男と一緒にスペインに行きました。
 ツアーで行ったのですが、そこで何人かの方と仲良くさせてもらいました。
 その中に、50代くらいの女性Sさんという方がいました。
 Sさんは、「わたしは連絡先交換とかしないのよ」と「日本でまた会えたら嬉しいわね」とおっしゃる凜としたとても素敵な方で、自由時間に一緒にピンチョスのお店に行ったり、ピカソゲルニカを観にソフィア王妃芸術センターに行ったりしました。

 そのSさんと話していた時に出てきたのが「原田マハ」という名前でした。
 「彼女の作品がとても素晴らしいのよ。知ってる?」と聞かれたのですが、僕は文学部出身にもかかわらず、その時、その名前も作品も知りませんでした。
 そしてそれから原田マハさんの名前は何回か目にしてきたものの、作品を読む機会がなかったのですが、とても評価が高かったので手に取って読んでみました。
 


楽園のカンヴァス (新潮文庫)

 

原田マハ 『楽園のカンヴァス』 | 新潮社

内容(新潮社より)
ニューヨーク近代美術館のキュレーター、ティム・ブラウンはある日スイスの大邸宅に招かれる。そこで見たのは巨匠ルソーの名作「夢」に酷似した絵。持ち主は正しく真贋判定した者にこの絵を譲ると告げ、手がかりとなる謎の古書を読ませる。リミットは7日間。ライバルは日本人研究者・早川織絵。ルソーとピカソ、二人の天才がカンヴァスに籠めた想いとは――。

勝手に五段階評価
★★★★★

感想
 
ちょうど友人の島田優里さんの個展に行ったりあいちトリエンナーレに行った時期に読み始めたからか、ものすごく良かったです。
 アンリ・ルソーの「夢」を巡る物語なのですが、僕のように美術に関する知識が殆どなくても引き込まれる物語の展開になっていました。

 小説を読むとき、僕の場合、すぐにその作品世界に入れることはなく、今回も探り探り最初は、冒頭から出てくる作品もわからなかったので、すぐに入り込むことは出来なかったのですが、その後はあっという間に作品世界に入り込んでしまいました。

 絵画を巡る物語だけれど、美術「だけ」の物語ではなく、アンリ・ルソーの物語だけれど、アンリ・ルソー「だけ」の物語でなく、恋愛要素がありつつも、恋愛「だけ」の物語でもない。

 特に僕がこの作品を読んで、そして、あいちトリエンナーレに行ったことでとても勇気づけられたのは、「表現すること」についてです。
 先日も少し触れましたが、僕は小さな時から「書く」ことによって、心や感情を整えるということをしてきました。

  誰に見せることもなく、詩のようなものを書いてきました。

 今でもそれは続いていて、けれど、恥ずかしかったこともあり、誰にも見せることなく、自分だけにしまっていたのですが(実際に紙に書いていた時のものは実家を出るときに捨てました)、アンリ・ルソーの人生とあいちトリエンナーレでの様々な表現を観て、自分もこのブログではない場所でその「詩」(みたいなもの)を残してみようかな、と思うようになりました。
 書いている間は誰にも評価されなかったとしても、僕がこの世からいなくなったとしても、このブログもそうですが、その言葉は残るので、それはそれで恥ずかしいけれど、同時に嬉しいような気もします。
(ということで、最近Instagramに写真と詩を載せるようにしました→https://www.instagram.com/bumi_y/


 作品の内容から逸れてしまいましたが、この作品を読んで思い出したのは平野啓一郎さんの『マチネの終わりに』です。
 『マチネの終わりに』は大人の恋愛小説ですが、似て非なるものだけれども、とても似たような印象を持ちました。
 『マチネの終わりに』は映画化され、来月公開されるので、この『楽園のカンヴァス』も(キャスト的にかなり難しいかも知れませんが)映画で観てみたいなと思いました。

 それと共に、まだ行ったことのないMoMA(The Museum of Modern Art)に行ってみたいと思いました。
 ニューヨークに行ってMoMAでゆっくり何日間も過ごしてみたいなと思いました。