映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

岡崎京子『リバーズ・エッジ』

 購読している新聞が「平成ベスト本」ということで月に1度くらい(?)の頻度で何冊か紹介されています。
 今回は慶応大学教授の経済学者坂井豊貴さんが「豊かさと退廃と戦場を生きる」というテーマで5冊紹介されていました。
 僕は昭和生まれですが、まさに平成に育ち大人になった世代なので、紹介されていた中の村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』湯浅誠の『反貧困』を読み、大きな影響を受けてきました。
 そこで岡崎京子さんの作品が紹介されていて、漫画ということもあり手に取って読んでみました。
 

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リバーズ・エッジ オリジナル復刻版

 

リバーズ・エッジ オリジナル復刻版│宝島社の公式WEBサイト 宝島チャンネル


内容(宝島チャンネルより)
死もセックスも愛もすべて
等価な透明な「無」のなかで再生される
私たちの新しい「リアル」。

勝手に五段階評価
★★★★★

感想
 描かれている世代とは少し違いますし、この作品では高校生たちを描いているのですが、僕は男子校だったので、その点に違いはありますが、服装が自由だったり、校内でタバコを吸っていたり、教室や校内の雰囲気が、自分の体験してきた学生(10代)時代を鮮明に蘇らせられたような気がしました。

 登場する死体やセックス、苛烈な暴力というものはありませんでしたが、それでも、特にセックスに関しては、僕が男子校にいたから直接目にしなかっただけで、その手の話は頻繁に聞こえてきましたし、幸い僕のいたクラスではありませんでしたが、いじめも耳にしました。

 作品では「モデル」をしている生徒、薬物をしている生徒が出てきますが、どこかの大きな会社の社長の息子が毎日タクシーで登校したり、タバコは大勢いましたが薬物も何人かは手を出していたと思います。
 そして、3年生になり、3学期は登校日がほぼないので、卒業がもう見えてきた夏に、いきなりいなくなった同級生(悪い噂しか聞こえてきませんでした)がいたりと、この作品と同じ事があったわけでも、体験したわけでもありませんが、まさに「平成の『豊かさと退廃と戦場を生きる』」というテーマに相応しい作品だと感じました。

 あぁ、僕はこういう時代に人格が大きく形成される学生時代を過ごしてきたのだな、と改めて振り返ることが出来ました。

 平成に生まれ、平成だけを生きてきた僕よりも若い世代にはリアルに感じられないかも知れませんが、僕にとっては、この作品で描かれている内容はまさにリアルに体験してきたことのように感じました。