映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

坂崎千春『片想いさん』

 先日書いた枡野浩一さんの『結婚失格』私小説でありながら、その構成は、一つの区切り毎に一つの本を紹介するような形になっていました。
 その中で触れられていたのがこの『片想いさん』です。

 


片想いさん (文春文庫)

 

文春文庫『片想いさん』坂崎千春 | 文庫 - 文藝春秋BOOKS

内容文藝春秋BOOKSより)
“本好き”に静かに愛され続けた伝説のエッセイ
大好きな本、癒しのおやつ、恋愛から遠い静かな時間。Suicaペンギンを生んだ人気イラストレーターが紡いだ伝説の人気随筆集。

勝手に五段階評価
★★★★★

感想
 
著者の坂崎千春さんはSuicaのペンギンや、千葉のチーバくんのイラストの作者です。
 何故この本を手に取ったのかというと、僕自身が片想いをしているということもあるのですが、もう一つ気になったのは、この本を書いた時点(32歳)で坂崎さんは、男の人と付き合ったことがなく、「寝たことがない」ということが書かれているということが、『結婚失格』で触れられていたからです。
 文庫版あとがきにも同じ状態であることが書かれているのですが、なんというか、単に片想いの苦しさとかその時の思いに共感するだけでなく、「寝たことがない」(セックスしたことがない)ということを公にしていることの「強さ」にただただすごいな、と思いました。

 この本を読んで思ったことは、自分の思いを相手に伝えることの大切さです。
 坂崎さんは学生の時から片想いをしていた人がいて、その人に10年経ってようやく伝えることが出来るのですが、それが片想いを続けることになった理由かな、と思いました。
 一人で片想いを続けていると結局その人のことを考えてしまい、希望を持つことは出来るかも知れないけれど、逆に言えば諦めることも出来ず、次に進むことも出来ない。
 だから、「あぁ、この人のこと好きだな」と思った時点で、その気持ちを伝えることが良いのだろうな、と思いました。

 それと同時に、思い出したのは、アルテイシアさんのコラムです。
毒親育ちなので、幸せな家庭を築ける気がしません [31歳からの恋愛相談室] All About
 『結婚失格』とも関連した僕自身の話になりますが、「病めるときベース」で付き合えるかどうか、というのが、とても重要だな、と改めて感じました。
 元配偶者はすごく「健康的な人」だったので、「病めるときベース」で付き合うことが出来ない人でした。
 僕自身がうつを患っていることもありますが、病んでいてるときでも相手が病んでいても一緒にいて大丈夫な人と付き合いたいなと。
 まぁ、そんな人間を好いてくれる人がいるかどうか、そもそもそうでなくても出会い自体がないので、そんな人が現れるのかはわかりませんが、そういう人が現れると良いな、と思います。