映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

島本理生『あられもない祈り』

 先日来書いている、相田みつをさんの『相田みつを ザ・ベスト にんげんだもの 逢』『相田みつを ザ・ベスト 一生感動一生青春』益田ミリさんの『世界は終わらない』 と同じく、古書店で100円だったので手に取った作品です。
 あまり日本の現代の作家の小説は読まないのですが、自分の中でそろそろ読まないとという感じがあったので手に取りました。


あられもない祈り (河出文庫)

 

あられもない祈り :島本 理生|河出書房新社

 

内容河出書房新社より)
〈あなた〉と〈私〉……名前すら必要としない2人の、密室のような恋――山本文緒行定勲西加奈子青山七恵さん絶賛の至上の恋愛小説。マスコミでも話題になった島本理生の新境地!

勝手に五段階評価
★★★☆☆

感想
 そもそも僕は小説は生きている日本の作家の作品はほぼ読みません。
 例外として村上春樹さんがいますが、現役の小説家の作品を読まないので、佐伯一麦さんの『木の一族』石原慎太郎『弟』は特別な作品ですが(それについては映画「二十六夜待ち」で少し触れました)、二人のそれ以外の作品は読んだことがありません。
 何故かというと、理由は2つあって、1つは、そもそも僕は活字(というか物語)を読み始めたのが高校3年生の時だったので、今いる人たちの作品を読むことより、すでに評価の決まっていて、さらに良い評価の人たちの作品を読むことを優先してきたからです(それでもまだまだ読めていない作品も多いのですが…)。
 もう一つは音楽(歌)にも共通していることでもあるのですが、日本語だとストレート過ぎるので、1度他の言語(僕に理解出来るのは英語だけですが)を通したものの方が直接伝わってこないので楽だということがあります。

 けれど音楽もそうなのですが、大人になって、というか子どもたちを育てている中で、日本語への抵抗もなくなってきていたので、歌に関しては日本語でも大丈夫にはなっていたのですが、小説・物語は読む時間がないので、相変わらずあまり積極的に日本の現役小説家の作品は読んできませんでした。

 が、島本理生さんは僕にとって特別な存在で、いつか読もうと思ってはいました。
 なぜ特別なのかといえば、島本さんは高校生の時にデビューしていて(芥川賞は逃したものの綿矢りさ金原ひとみと一緒に注目された)、進学した大学が僕と同じでさらに同じ学部でした。
 同じ学部(しかも、大学の中では割と人数の少ない学部)だったので、いつか同じ授業で会えたら良いな、と淡い希望を抱いていたのですが、島本さんは2年生の時だったかに中退していました。

 ということで、近いような遠いような存在である島本さんの作品をいつか読もうと思っていたのですが、ようやく機会が訪れました。
 解説を書いている西加奈子さんの評価というか文章を読むとこの作品の持つ価値みたいなものがわかるのですが、実際に読んだ僕としては、正直な所、あんまり響いてきませんでした。

 というのも、主要な登場人物である〈あなた〉と〈私〉に名前がないことが、西さんは高い評価をする理由にしていましたが、僕には逆にその名前がないことが象徴するように、描かれる出来事がぼんやりとしているように感じました。
 リストカットやセックスに関する肝心なところの描写は避けつつ物語が進む。
 確かに「想像」することは出来るのですが、僕にはもう少し書いてくれないと、そもそも何を書きたかったのかがわからなく感じました。

 それは絵画を観るときと同じようなもので、僕は印象派の作品が好きなのですが、逆に抽象画は苦手です。
 そういう絵と同じような好みが小説にも現れたのかも知れません。

 印象派はぼんやりとしているけれど、抽象画のように「想像」をそこまで求められないし、あくまでもある程度の輪郭がある。
 けれど、抽象画はそもそも何を描いているのかを想像することから求められる。
 あくまでも僕の印象ですが、そんな感じです。

 この作品が男女の恋愛を描いていることはわかります。
 けれど、それ以上のことは読んでいてもぼんやりしていてよくわからない印象でした。