『路上のうた』
以前から持っていたのに置きっ放しにしていた本を読みました。
路上生活(いわゆる「ホームレス」生活)を送る人たちが販売員となっている「THE BIG ISSUE」。
販売員の生活をささやかながら支えるという事もありますが、内容が面白いので、販売員の方を見つけるとよく買って読んでいます。
その販売員の中で川柳を創っている方々がおり、その作品をまとめたものがこの本です。
僕は販売員の方から直接買いましたが、Amazonでも売られていました。
日々の生活の中から出てくる川柳なので、路上生活が反映された作品になっています。
僕が良いな、というか興味を持ったのはたとえばこれらの作品です。
盆が来る 俺は実家で 仏様
寒い夜 マッチで焚き火 怒られる
駄洒落でも クルシミマスと 言えぬ今
クリスマス 風邪をひいたら クスリマス
ご来光 拝む前から 缶集め
見てしまう 故郷(ふるさと)行きの 高速バス
故郷の家族・親戚には自分はもう死んだものとなっているだろうな、ということや、クリスマスで世間が賑やかな中、寒さに耐えている様子、捨てきれぬ故郷への思いなど、つらさを感じられるもの、それでも川柳に、言葉にすることでユーモアを感じます。
ユーモアを込めることでつらくても生きぬこうという力だったり、しぶとさが現れているような。
あとがきは、作家の星野智幸さんが書かれていました。
星野さんがいくつかの川柳を引用しつつ、このように書いていました。
枕元 門松がわり 靴を置く
雨上がり 我が寝床から 虹が立つ
これらは想像力の勝利だ。正月の路上の寝床が、たちまち門松の並ぶお屋敷となる。路上のねぐらにとって、寝ている最中に降る雨は悩みの一つだが、それを幻想的な光景に変えてしまう。
ユーモアだけでなく、想像力によって困難な状況を生きぬくという勝利。
筋肉質な力強さというよりも、ひらりと柔軟に生きぬいていく力強さを感じる、とても良い本でした。