映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「チョコレートドーナツ」

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【告知】7人の主夫でパネルトークします。

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今年も半分が過ぎようとしていますが、今年観た映画で一番良かった作品が(自分の中で)更新されました。

 

チョコレートドーナツ [DVD]

 

映画の原題は「Any Day Now」です。

いつも原題と日本語タイトルとの乖離に怒っている僕ではありますが、「Any Day Now」は確かに訳しにくいのと、最後まで観ないと、しかも、最後の部分を日本語訳ではなく、英語でちゃんと聞き取らないとこのフレーズが出てくることに気づかないので、チョコレートドーナツで良いのかも、と思いました。

もちろんベストなタイトルとは思いませんが。

 

さて、内容ですが、これはもう、僕が説明するよりもとにかく観てもらいたいです。

なので、YouTubeにあった予告編をまずは貼ってみます。

 

 

予告編を観ると分かりますが、内容は、まだ偏見や差別の強かった時代、アメリカのカリフォルニアでゲイのカップル(ルディとポール)が知的しょうがい(ダウン症)の少年マルコを引き取るというものです。

 

ゲイである、ということを隠さなければ生活できなかった、一緒に暮らすということさえも罵声を浴びせられるような時代でした。

そして、そんな時代に、身寄りの無い(というか服役中のジャンキーの母親しかいない)マルコを引き取るというもので、世間からのとても強い反発があったということが描かれています。

 

ラストがどのようになるのか、僕はそれまでの伏線があっただけに、そして、なんと言っても実話をもとにしているということから、何となく「感動的な話」で終わるのかと思っていました。

が、あっさりとそれは破られてしまいました。

 

「あぁ、それが現実なのか…。」、と。

 

この映画でとても良いな、と思ったのは、マルコを引き取ると言い出し、まだ付き合い始めたばかりだったポールをも巻き込んでいくルディが「マルコを引き取ることになった理由」を一切語らない、描かないことです。

子供を引き取り、養子にする、というとき、「かわいかったから」とかそんな理由を述べる人もいますが、ルディは一切語りません。

 

観ていて分かるのは「ただ隣に住んでいた」ということと、「(母親が逮捕されて)1人でいるマルコを放っておけなかったから」というものです。

この、「何故マルコを引き取ったのか」ということを一切描かず、語らないことで、逆にルディの愛情が深いものであるのを感じました。

 

我が家の子どもたちに関して言えば、僕らが何かしらの【理由】があって育てているわけではありませんし、「ただ目の前にいたから」というのが僕としての実感です(もちろん、目の前にいたのは、ツレが産んだからではあるのですが)。

子どもたちが「かわいかったから」でもなく、「(たとえばマルコのように)しょうがいを持っているから」ということでもありません。

ただ、目の前にいて、その子を育てないといけないと思ったからです。

 

ルディは最初、1人で歩いているマルコを見つけ、何とかしなければならない、という感じで助けたのでしょうが、途中からはもう、その姿は【お母さん】(見た目はおっさんですが)になっていました。

もう、どこからどうみてもお母さんで、同僚にからかわれたときに反論する姿や、怖じ気づいているポールに叱咤する姿はもう【お母さん】としか言えない姿でした。

母強し、と。

 

そして、ラストにおいても、ルディの姿がとても強い(けれど悲しみも内包している)ものに見えました。

 

ゲイ、あるいは、しょうがい者という点に目が引かれやすいですが、「どんな条件を満たせば養子として迎え入れることができるのか」という点でこの映画を観ても、日本との差が浮き彫りになって面白いと思います。

 

映画の終盤で弁護士がこんなことを言っていました。

 

「母親が出て来たら終わり。世界中の裁判所どこだってだ。」

 

日本でもこの「どんなに最悪な母親でも親権を主張したら母親になる」という現実が今もあるのを直視しつつも、「でも、子どもにとって本当に良い環境とは?」ということを考える、とても良い材料を提供しているように思います。

(そういえば、オランダに行った時、最後の晩餐で連れて行ってもらったレストランで、隣にいた家族は人種が違う娘さんのバースデーをお祝いしていて、娘さんがとても喜んでいました。

オランダではゲイのカップルも子どもを育てている人たちもいるということだし、こういう光景が当たり前になると良いな、と思ったのを思い出します。)

 

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)

★★★★★

 

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