映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

寮美千子編『空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集―』

  最近ちょっと精神的に体調を崩していて、あまりちゃんとした文章が読めないというか、詩が読みたいな、ということで、とりあえずAmazonで評価の高いものを見たら、以前読んだ寮美千子さんの『あふれでたのはやさしさだった』の前に出された詩集がトップに出てきました。
 『あふれでたのはやさしさだった』がすごく良かったので、手に取って読んでみました。

 


空が青いから白をえらんだのです ―奈良少年刑務所詩集― (新潮文庫)

 

寮美千子/編 『空が青いから白をえらんだのです―奈良少年刑務所詩集―』 | 新潮社

 

内容(新潮社より)
受刑者たちが、そっと心の奥にしまっていた葛藤、悔恨、優しさ……。童話作家に導かれ、彼らの閉ざされた思いが「言葉」となって溢れ出た時、奇跡のような詩が生まれた。美しい煉瓦建築の奈良少年刑務所の中で、受刑者が魔法にかかったように変わって行く。彼らは、一度も耕されたことのない荒地だった──「刑務所の教室」で受刑者に寄り添い続ける作家が選んだ、感動の57編。

勝手に五段階評価
★★★★★

感想
 この本の中には寮美千子さんが奈良少年刑務所の「社会性涵養プログラム」の一つとして、一期6ヶ月、月に1度、90分行っていた「物語の教室」で18歳から25歳までの少年たちが作った詩が紹介されています。
 奈良少年刑務所に服役しているとはどういう少年たちなのかについてや、そもそも「社会性涵養プログラム」とは何なのか、何故寮美千子さんが関わることになったのかについては『あふれでたのはやさしさだった』を読んでほしいのですが、この本では、一期6ヶ月として月に1度行われていた「物語の教室」で少年たちが作った詩をあくまでもメインにおき、それに対して寮さんがコメントのようなものを載せています。

 僕がここに載っていた57編の詩の内、一番心にしみた詩を載せてみます。

まほうの消しゴム

なんでもかんでも 消せる消しゴム
いやなことや
いろんな人に迷惑かけたこと
こんな自分を 消せる消しゴム
そんな消しゴムが あったらいいな

 
 寮さんのコメントとしては、取り返しのつかない罪をしたから服役しているので、消しゴムで消すことなど出来ないのだけれど、と書いていましたが、この詩はたとえ法律的に罪を犯したことがなくても、とても響いてくる詩でした。

 僕には消したい「いやなこと」や「こんな自分」を消したいと思うことが沢山あって、わりと頻繁に「こんな自分」を消したいと思っています。
 消せてしまえればどんなに良いか。
 でも消すことが出来ない現実。
 生きていくしかない現実。
 だからこそ、僕にはとても響いてくる詩でした。

 詩集を読むと、その時の気持ちや情況で響いてくる作品が違うのも良いな、と思います。
 多分、この詩をうつになる前に読んでいたら、そしてそれよりも遙か前の高校生くらいの時に読んでいたら(その時はまだこの詩集は出版されていませんが)、全く違う詩が響いてきたのだと思います。