映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

『子どもの声を社会へ』

最近読んだ本を紹介したいと思います。

子どもの声を社会へ――子どもオンブズの挑戦 (岩波新書) 子どもの声を社会へ――子どもオンブズの挑戦 (岩波新書)
(2012/02/22)
桜井 智恵子

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著者は、大阪大谷大学教授で兵庫県川西市で「子どもオンブズパーソン」をしている桜井智恵子さんという方です。

 

「子どもオンブズパーソン」というのは、川西市のサイトを見るとこのような説明になっています。

「わたしたちオンブズパーソンは、子どもの声をしっかりきいて、子どもの立場になって、「子どもにとっていちばんいいこと」を、あなたと一緒に考えます。子どもを助けて応援するオンブズパーソンです。」

 

著者が子どもオンブズパーソンとしての働きの中で、具体的な事例をあげつつ、「いじめ」や「不登校」にどのように向き合ったか(あえて「解決」とは書きません)が書かれています。

具体的な内容に関しては、新書ですし、読んでもらえれば良いと思うのですが、著者の視点、川西市自体が掲げている(条例化している)一貫した立場は、「子どもの最善の利益」は何かを考えて行動する、というものです。

 

最近、「いじめ」などの報道が盛んになっていますが、学校や教育委員会、自治体、文部科学省だけでなく、論じているさまざまな意見もその多くは残念ながら当事者の「子どもの最善の利益」は何かを考えられていないように感じます。

川西市と著者は何故「子どもの最善の利益」を重要視するかと言えば、「子どもの権利条約」を根拠としています。

子どもにおけるさまざまな出来事を僕たち大人が論じる時に、「子どもの最善の利益」をしっかりと見据えながら考えられているか、それを改めて考えさせられました。

 

また、著者が具体的に関わった中で、共感したのは、「いじめ」や「不登校」そのものの「解決」とは何か?という部分です。

「いじめ」がなくなったら解決なのか、「不登校」の状態から学校に通えるようになれば「解決」なのか、ということです。

「いじめ」や「不登校」などの当事者に関わっていくと、それにつながるさまざまな要因があるようです。

だからこそ、「解決」のマニュアルは設定できないし、設定することも無いそうです。

 

うまく伝わったかは分かりませんが、最近「いじめ」報道が過熱していて、子どもを持つ親の中でもさまざまな意見を耳にしますが、この本は一度読んでもらえたら、良いな、と思って紹介しました。