映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

『うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち』

先日、Amazonでおすすめ商品としてこの本が表示されました↓

うつヌケ うつトンネルを抜けた人たち(角川書店単行本)

作者の田中圭一さんのことは、以前noteで作品を読んだことがあったので知っていて、その時も「うつ」の話でした。

はぁとふる売国奴 | note

noteで読んだ時も面白いというか興味が湧いたのですが、この本はそれを本にまとめたもののようで、レビューを読んでみると多くの人が評価していたので、うつ経験者というか、去年からかなりうつがぶり返している感じがあるので、読んでみることにしました。

内容は、タイトルに「うつヌケ」とあるように、うつの経験があり、そしてそのうつのトンネルから抜けたことのある人たちが、1人1エピソードで書かれています。

そもそもうつ病の診断がついていない人もいますが(病院に受診しない人が数百万人規模でいるという調査結果もあります)、それもうつを巡る日本の現状を考えると、うつにも様々なものがある、ということを分かり易く提示しているように思いました。

この場面↓でうつの特徴がうまくまとめられていますが、うつ経験者にとってはすごく共感出来ることでうなずけることでも、実は経験者じゃなかったり、当事者が周囲にいない人にとっては知らないことなのかもしれないので、こういうことが多くの人に知られると良いな、と思いました。

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少し物足りないな、と思ったのは、1人のエピソードが短いので、どうしてもうつになったきっかけから、うつになっている間の過ごし方、そしてそこからどのように抜けたか、といことを丹念に描くと言うよりは、うつをどうやって抜けたかに焦点が当たっていて、それ以外の部分が短く感じることです。

うつ当事者としては、抜けた時のエピソードというのは本当にものすごく重要なことなのですが、それでも知りたいのが、うつになっていた時にどうやって過ごしていたのかということ。

特に、僕の場合で言えば、無理解で余計に苦しめてくる人たちもいましたが、その人たちがいたから存在がかすんでいた、身近な人が実は結構無理解だということ。

うつの一番ひどい状況からは脱したものの、結局今もうつを完全に脱して切れていない(と僕が考えている)のは、今の環境がやはりまだ良くないから。

そういう人たちとは関わらずに済ませられれば良いのですが、そう出来ない現状があり、なので、うつからも完全に脱することは出来ません。

そういう状態にいると、うつにさまよっている間の他の人の経験というのがすごく知りたくなるのでした。

また、うつのヌケ方についても僕の実感と違いはありませんでした。

ここに↓描かれているように、「小さな達成感」や「必要とされているという実感」が本当に重要だなと僕自身も思います。

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でも、自分のことを考えてみれば、達成感や必要とされているという実感はまるでありません(散々書いていますが、ツレの第一声はいつも否定から入り、家事育児をいくらしても感謝の言葉もなく、何かを要求して来ることはあっても僕からの要求に応じることはほとんどない)。

去年から始めた山登りは「小さな達成感」ということを自分の中で言語化したり、明確な考えがあって始めたものではなかったのですが、少しでも「小さな達成感」を感じるようと僕自身の身体が求めていたのではないか、と今になって思います。

それでも、うつをぶりかえした中で、少しでも悪い方向に向かわないようにと始めたことなので、快方に向かっているわけではありません。

最近も希死念慮が強く、病院に行った方が良いんだろうなぁ、と思いつつも、どうせ何をしてもツレはネガティブな反応をするので(たとえば病院に行くと「金がかかった!」とか?)、逃げ出すことも現実的に出来ないし、もういっそのことさっさと死にたいなぁ、と思うのですが、自死まで踏み切る勇気もなく、なるべく早くゆるやかに死んでいきたいな、と思って過ごしています。

って、なんだか自分のことをつらつら書いてしまいましたが、コミックエッセイということで読みやすいことはもちろん、脳が寒天で覆われる感じなど、経験者だからこそよく分かる表現などもあり、うつ未経験者の方にもおすすめです。