映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「奇跡の教室」

僕がリクエストし、TSUTAYAディスカスから送られてきたので観た映画です。

 

奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ (字幕版)

 

内容は、フランス、パリ校外の日本で言うところいわゆる「底辺校」のレオン・ブルム高校で、しかもその学校でも他の先生達からも手に負えないと言われる1年生のクラスとその担任ゲゲン先生とが、「アウシュビッツ」をテーマにした全国歴史コンクールに参加する、という実話を元にしたもの。

 

冒頭で描かれるのは、ムスリムの女子生徒に「スカーフをかぶっている」ことを理由に対応を拒否する学校と、それに抗議する生徒と保護者のやりとりです。

 

僕にはこのやりとりが何を意味しているのか今になってもよく分からないのですが、とりあえず、この学校には、人種も宗教も、母国も経済状況もまるで違うことが分かります。

 

歴史、美術史担当のゲゲン先生があるキリスト教美術を解説する時に、地獄に描かれているのがイスラーム預言者ムハンマドであると言うと、怒り出す生徒たち。

先生は丁寧に教えていきますが、ムスリムの生徒達は猛反発します。

 

他にも、クラスにユダヤ系がいるにも関わらずユダヤ人を揶揄する冗談を言う生徒。

それに対して、ゲゲン先生は「今の言葉は絶対に許されない」と批判します。

 

また、クラスのユダヤ系の女子生徒と、アフリカ系の男子生徒が仲良くなるのですが、それを見た女子生徒の父親が明確に男子生徒を避ける場面が出て来たりします。

 

実話を元にし、実話を元にして映画化されたということは、ハッピーというか、すごくポジティブな変化、出来事が起きたからですが、僕がこの映画が良いな、と思ったのは、決して「特別な教師が生徒達に変化をもたらした」という超人的な影響力によって生徒達が変化した、という描き方をしていない点です。

 

ゲゲン先生は人種差別に関して明確に批判しますし、全国歴史コンクールに出場するように勧めましたが、あくまでも補助的な役割に徹しています。

それは、違う言葉を言えば、どんなに困難な状況にある生徒達であっても、もともと大きな力、能力、可能性を持っていて、それを信頼している、ということ。

 

もし、このゲゲン先生が特別なことをしているとしたら、その「生徒達の可能性を信頼する」という点だと思います。

そして、信頼しているからこそ、それぞれに判断を任せる。

仲違いしている状況には、アドバイスをし、自分の考えを述べますが、決して生徒達をコントロールしようとはしていない。

 

何か「特別な教師による特別な指導」を期待すると肩すかしするかも知れませんが、僕は教育の本質を捉えたとても良い映画だと思いました。

 

 

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)

★★★★☆

 

2017年に観た映画ランキング

 

1 「さとにきたらええやん」 / 2 「この世界の片隅に」 / 3 「シチズンフォー スノーデンの暴露」 / 4 「帰ってきたヒトラー」 / 5 「奇跡の教室」 / 6 「ミッドナイト・イン・パリ」 / 7 「her/世界でひとつの彼女」 / 8 「if i stay」 / 9 「ハドソン川の奇跡」 / 10 「REDリターンズ」

 

11 「 愛しき人生のつくりかた」 / 12 「ディーパンの闘い」 / 13 「花様年華」 / 14 「EDEN/エデン」 / 15 「17歳」 / 16 「愛とセックス」(Sleeping With Other People) / 17 「あと1センチの恋」 / 18 「海難1890」 / 19 「ロング・トレイル!」 / 20 「ワールド・ウォーZ」

 

21 「惑星のかけら」 / 22 「麦子さんと」 / 23 「カケラ」 / 24 「スプリング・ブレイカーズ」 / 25 「BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント」