山と本と映画と自分

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「十月十日の進化論」

働いている場所がファミリーが割とよく来る場所だからか、あるいは地域的に子育て世代が多いからなのか、世間で言われているよりも、小さな子ども連れや妊婦さんを結構頻繁に見かけます。

自分としては、3人の子どもたちがみんな小学生なのと、離婚したので、パートナーの妊娠や結婚というものをはるか遠い過ぎ去りし出来事のような感覚でいましたが、今回観た作品の主人公たちよりも自分は年齢が低いので、「当事者」なのかも知れない、とそんなことをふと思い出させられました。
 

十月十日の進化論

 

ドラマW 十月十日の進化論|WOWOWオンライン

作品情報Yahoo!映画より)
タイトル 十月十日の進化論
製作年度 2015年
製作国 日本
監督 市井昌秀

ストーリー(公式サイトより)
東京で独身生活を送る昆虫分類学博士・小林鈴(尾野真千子)は、ある日突然勤めていた大学を解雇されてしまう。研究分野の狭さと偏屈な性格が災いしたのだ。その夜、鈴は、訳あって同じ戸籍には入っていない実父・中村保(でんでん)が営む喫茶店で昔の恋人・安藤武田中圭)と再会する。武は、酔いつぶれた鈴を家まで送っていくことに。果たして、2人は酔った勢いで一夜をともにし、それから約5週間後、鈴の妊娠が発覚する。
人間は胎児の間の十月十日で生命30数億年の進化を再現するという神秘を書物から知り、産む決意を固めていく鈴。だが、武には子どものことを切り出せない。ようやく決まった仕事も思うようにいかず、ふてくされる日が続く中、母親・小林文子(りりィ)が実家から上京してくることに。そこで妊娠がばれ、叱責されるが、子どもを一人で産み育てる気持ちに変わりはない。鈴が意固地になるには、ある秘められた過去があった。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
観終わったあとに分かったのですが、この作品は劇場公開された映画ではなく、WOWOWで放送されたドラマとのことです。
それでも、作品のことを調べるまでは全く分からなかったので、映画と遜色のないクオリティでした。

そのクオリティというのは、作品に登場する、たとえば主人公鈴の父親を演じるでんでんだったり、母親を演じるりりィの安定した演技力だったり、物語の途中に挟み込まれるアニメーションだったりします。

物語の展開としては、「女性の生き方」とか「家族とは?」「親子とは?」、あるいは「結婚とは?」ということを考えを巡らせられる内容になっていました。
酒に酔った勢いで元彼とセックスして妊娠し、元彼に伝えようとしたがうまくいかず、過去の出来事もあって、自分を一人で育てた母親に反対されようが、自分は一人で子どもを産もうと決意する。

物語の冒頭では、ポスドク(博士号を取得しているが正規の研究職がない人たち)の現状や、さらに、ポスドクに限らず研究職や教員には女性のポストや居場所が圧倒的に少ない(=男性優位な世界)現状が暗に示されています。

そのまま、「女性の生き方」やあるいは多様な生き方・働き方を、冒頭のポスドクや女性研究者の現状のように、暗示するということが出来たと思うのですが、残念ながらそういう展開にはなりませんでした。

最終的に示されているのは、「結婚=ゴール」というものであり、「家族=結婚している夫婦とその子ども」という従来の枠組みです。
主人公鈴自身が母親に育てられたという生い立ちを前提にしているからこそ、母親と違う生き方としての「結婚」というものにたどり着いたと捉えることも出来ますが、結局それは、世間一般に流布されている価値観に迎合することとどう違うのか、示されはいませんでした。
もし、迎合しなければ生きていけない、という現状を示すとしたら、それはまた違う大きな意味を持つ「結婚」というものになるわけですが、そういうことでもなく、単に従来からの「結婚=ゴール」、「家族=結婚している夫婦とその子ども」を焼き増しているだけに見えました。