映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

篠原ウミハル『鬼踊れ!!』

 久しぶりに漫画の話でも。
 読んでいる漫画作品が終わるということがあまりないので、新しい作品はKindleで無料で読めるもの以外はあまり手を出さないようにしているのですが、久しぶりに新しく読んでみた作品です。

 興味を持ったきっかけは、今年の初めに新聞の書評欄で紹介されていたからです。

(コミック)『鬼踊れ!!』(1) 篠原ウミハル〈著〉:朝日新聞デジタル



鬼踊れ!! 1巻 (芳文社コミックス) Kindle版

 
 話の内容は、都内の私立高校で新たに発足することとなった「民俗芸能部」の顧問を任されることになった新任教師の県を中心に展開します。
 半ば無理矢理顧問を引き受けさせられたものの、民俗芸能の知識は皆無。
 けれど、1人の生徒(紬)が岩手県に伝わる伝統芸能鬼剣舞を踊る姿に魅了され、積極的に関わっていくことに。
 一巻では部活動新設へ向けて部員を募ろうとする中、紬は「1人でいい」と加わろうとしないという、部活新設へ向けたドタバタが描かれています。
 7月に二巻が出たのですが、その2巻では揃った部員が抱えている問題や、新入部員希望者とのやりとりが描かれています。

 2巻では生徒に焦点が当てられているものの、物語は基本的に顧問を務める県の視点から描かれています。
 詳しくは描かれていませんが、県は転職で教員になっています。
 なので、何か思うところあって教員になったと思うのですが、それが生徒たちとのやりとりに垣間見える気がします。

 例えば、ある生徒が以前入っていた部活での人間関係を清算せずに本人も気にしているということに対し、今やり残すとこの年(30代)まで苦しむよ、というようなことを言っています。
 県がどういう思いを持っていたのか、という点ももちろん気になりますが、学校生活を楽しくとまで行かなくても、後々苦しんだり、後悔しないようにしてあげたい、という気持ちが伝わってきます。

 僕個人としては、学校生活がすごく楽しかったという人の気持ちはよくわからないので、楽しく過ごせるようにさせてあげるアドバイスなどは出来ないのですが、それでも過去の学校生活での出来事に何十年も苦しんでいたり、悩んでいたり、後悔している人たちがいる中で、なんとか今片付けておけるものは、片付けさせてあげたいと思っています。
 この気持ちが顧問である県が生徒たちに接する姿と重なると感じました。

 高校生たちの青春群像劇なので、人間関係の悩みなども出てきますが、メインの民俗芸能、伝統芸能も見事です。
 民俗芸能は琉球アイヌくらいしかまともに観たことがありませんが、様々な地域でいろんなものがあり、その意味などの解説はもちろん、その迫力までも伝わってくるような描き方がすごいな、と思います。