映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「ゲット・アウト」

 ホラー映画が苦手だと言いつつも、Amazonでの評価が高かったので観てみました。
 といっても、やっぱり苦手なので、カバーの写真がどう見てもホラーというか恐いので、ダウンロードしてから実際に観るまで10日くらいかかりました…。
 


ゲット・アウト(字幕版)

 

作品データ映画.comより)
監督ジョーダン・ピール
原題 Get Out
製作年 2017年
製作国 アメリ
配給 東宝東和
上映時間 104分
映倫区分 G

あらすじシネマトゥデイより)
ニューヨークで写真家として活動している黒人のクリス(ダニエル・カルーヤ)は、週末に恋人の白人女性ローズ(アリソン・ウィリアムズ)の実家に招かれる。歓待を受けるが、黒人の使用人がいることに違和感を覚え、さらに庭を走り去る管理人や窓に映った自分を凝視する家政婦に驚かされる。翌日、パーティーに出席した彼は白人ばかりの中で一人の黒人を見つける。古風な格好をした彼を撮影すると、相手は鼻血を出しながら、すさまじい勢いでクリスに詰め寄り……。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 
観終わってすぐにはこの作品の意味というものがいまいち分からなかったのですが、少しずつ振り返ると、この作品の良さがじわじわと染み渡って来ました。

 というのも、この物語では直接的に白人と黒人という違いが描かれていて、主人公クリスの恋人ローズの実家に行き、その家族はもちろん白人で、そしてその周辺に住む人や友人たち、警察官もみんな白人です。
 白人が住む地域に住んでいるので、当然そこでは黒人であるクリスは、異物というか、はっきりと違う人間だということが画面で描かれます。

 もちろん今の時代、黒人だからということで排除したり、馬鹿にしたりすることは許されないので、家族もあからさまに排除するような対応は取らないものの、画面を通して明確な違和感を終始突きつけてきます。
 その違和感がなぜだったのか、ということが後半にかけての展開で明らかになっていくのですが、じわじわと染み渡ってきた良さ、というのは、様々に張り巡らされた伏線です。

 僕が一番感心したというか、観客に考えさせているなと思ったのは、度々登場する鹿です。
 まず最初に登場するのは、ローズの実家に行く際、道路を横切った鹿をはねてしまう場面で、その後、ローズの実家で目にする剥製として、そして、その剥製を使ってクリスがある行動を取るのですが、これらを振り返って考えてみると、この鹿というのは黒人を表しているのではないか、と思うのです。

 また、クリスが窮地に追いやられることになる紅茶、そして、その窮地から救われることになる綿、それらは近現代における黒人の歴史において切り離せないものです。
 紅茶も綿(綿花)もプランテーションで収穫されてきたものであり、そこでは多くの黒人たちが労働させられてきました。

 最初はそれらの黒人の歴史と紅茶や綿というものが結びつかないで観ていたのですが、観終わったあとに、直接的に黒人と白人という境界線を見せつけながら、間接的、あるいは比喩的な表現で様々に黒人と白人が今も尚抱えている問題というか、黒人に対する差別と抑圧というものが描かれていることが分かって来ました。

 1回観ただけなので、まだまだ十分に理解出来ていないと思いますが、随所にちりばめられた伏線や比喩など、とてもよく出来た作品だと思います。