澤江ポンプ『パンダ探偵社』
週末に載っている新聞の書評を読んで気になったので手に取ってみた漫画です。
(コミック)『パンダ探偵社』(1) 澤江ポンプ〈著〉:朝日新聞デジタル
気になった理由は、書評に書かれている内容と共に、書いている人がかつて紹介したこともある『悟りパパ』と同じ、澤江ポンプさんだったからです。
『悟りパパ』とても良くて、好きだったのですが、続かなかったんですよね…。
なので、同じ澤江ポンプさんが描いているということで、読んでみました。
パンダ探偵社 (1)
内容(公式サイトより)
パンダ化する半田と、先輩・竹林の探偵物語。
アニマル化、プランツ化する変身病患者を専門とする彼らの調査。
その結末は…!?
不治の病に罹る人間の覚悟と選択ーーー
感想
内容にある「パンダ化する半田」ととか読んでもよくわからないかもしれませんが、変身病という、人間から動物になってしまう、不治の病にかかった半田が探偵業を営む先輩竹林と一緒に働かせてもらいながら、そこで出会う変身病患者たちとの関わりを描いた作品です。
「人間がパンダになる」という設定は突飛に感じるかもしれませんが、これは様々な病を捉えるヒントになる作品だと僕は感じました。
完全に変身すると、その動物そのものになってしまい、人間としての「理性」や「知識」「記憶」は失われてしまう。
人間も認知症を患ったり、あるいは事故などで脳の機能がそれまでと全く違ってしまうと、「理性」や「知識」「記憶」が失われたかのように、それまでとは全く違った人間になってしまったと感じることがある。
僕自身もうつを患っていますが、うつは不治の病ではないものの、うつの症状がひどいときは、記憶することが困難になり、文字を読むことも難しくなり、イライラも募るので「理性」が失われたかのような状態になります。
(まぁ、だからこそ、そんな「人間ではなくなった」「完全に変わってしまった」と思った元配偶者は「追い出した」のでしょう)
この漫画では、完全に動物化した患者が行く場もなく、羽ばたいていく場面が描かれます。
これは羽ばたいていくという新たなステップと捉えることも出来ますが、その半面、この「人間の社会」では受け入れられない存在だということを表しています。
つまり、パンダになったりと「あり得ない」病気を患っている人たちを描いていますが、この社会の様々なところで起きている、何かしらの病にかかったことによって「人間」扱いされず、社会から追い出されている人たちの姿を描いているのです。
まだ一巻なので今後の展開がどうなるのか楽しみですが、「記憶」や「理性」を失い社会(家族)から追い出された経験のある身としては、この後、社会と彼ら変人病患者がどう折り合っていくのかに注目していきたいと思います。