映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

矢部太郎『大家さんと僕 これから』

 以前紹介したこともある矢部太郎さんの『大家さんと僕』、その後、大家さんが亡くなったことはニュースで知っていましたが、前作がとても良かったので、続編のこの作品も読んでみました。

 


大家さんと僕 これから

 

矢部太郎 『大家さんと僕 これから』 | 新潮社

 
内容(新潮社より)
季節はめぐり、初めての単行本が大ヒットとなった僕は、トホホな芸人から一躍時の人に。忙しい毎日を送る一方、大家さんとの楽しい日々には少しの翳りが見えてきた。僕の生活にも大きな変化があり、別れが近づくなか、大家さんの想いを確かに受け取り「これから」の未来へ歩き出す僕。美しい感動の物語、堂々完結。

勝手に五段階評価
★★★★★

感想
 
冒頭で矢部さんが「この作品はあくまでも自分が観たもので、フィクションです」ということを書いていることから、矢部さんの人柄、人への真摯さが伝わってきました。

 前作『大家さんと僕』は手塚治賞をしましたが、その時には既に大家さんは体調を崩していたそうで、その様子が描かれています。
 実際に矢部さんは大家さんが亡くなったあと数ヶ月に渡り、描くことが出来なくなってしまったそうですが、静かにその事実を受け止めつつ、それを描きながらも静かにその喪失感が伝わってくる内容でした。

 弱っていく大家さん(ありがちと言ってはなんですが、転倒による骨折からの衰弱)、それに向き合う大家さん自身と矢部さん。
 僕は今暮らしている家の大家さんに会ったことすらありませんが、大家さんではなくても、こうして年齢も境遇も経験も全く違う人と関わる機会が(少なくとも都市部では)少なくなってきている現在ではとても羨ましく感じました。

 大家さんだけではなく、大家さんを通して、大家さんのお友だちとも知り合って行く。
 人とのつながりって本当に不思議で、簡単に絶つことも出来るけれど、簡単には出会えない人との出会いやつながりって本当に貴重だよな、と痛感します。
 そして、そのつながりも、いつ終わるかも分からないし、突然終わってしまうこともあるということを再認識しました。