映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

七海仁・月子『Shrink〜精神科医ヨワイ〜』

 先日最新刊(5巻)が出て、やっぱ良いなぁ、と思いつつ、そういえばここにはこの作品のことを書いたことがなかったので、書いてみようと思います。
 最初に目にしたのは、ちょうど去年の年明けに1巻が出たタイミングに近く、確かAmazonか何かで、おすすめ作品として表示されたのがきっかけだったかと思います。
 1巻目がとてもよかったので、メンタルヘルスに関わる知り合いにもプレゼントしました。

 


Shrink~精神科医ヨワイ~ 1

 

Shrink〜精神科医ヨワイ〜[漫画公式サイト/最新情報・試し読み]|集英社グランドジャンプ公式サイト

内容(公式サイトより)
パニック障害うつ病発達障害PTSD…。
心に病を抱えながらも、誰にも相談できずに苦しんでいる潜在患者が数多くいると言われる、隠れ精神病大国・日本。その自殺率は先進国では最悪レベル。なぜそのような事態に陥ってしまっているのか…。精神科医・弱井幸之助が、日本の精神医療が抱える問題に向き合い、人々の心の影に光を照らす!

感想
 現在僕は抗うつ薬を飲んでいるのですが、うつを発症する前から、精神疾患や「知的障害」、あるいは「発達障害」を持つ人たちとは関わりがありました。
 メンタルヘルスに関する本を読むのは、それらの人たちのことを理解したいということからだったのですが、途中からは自分自身が当事者となったので、治癒へのアプローチとして読むようになりました。
 そんなわけで、この漫画も「おすすめ作品」として表示されたのだと思います。

 5巻目を読んだばかりなので、どうしても5巻目の感想になってしまいますが、今までの4巻とは違って、今回の5巻目はメンタルヘルスを理解するとか、そうなんだよなぁ、とか共感するということよりもさらに踏み込んで、自分自身の傷を再認識する内容でした。
 簡単に言えば、幼少期の出来事を見つめなおすというものなのですが、あぁ、同じような経験をしたな、とどうしても自分が子どものときに親からされたことを思い出してしまいました。
 そのことに対して僕は今でも許すことは出来ないのですが、かといってそのことに対して今でもものすごく怒っているかといえば、その出来事自体が「傷である」「深く傷ついた経験である」ということを僕自身が認識し、一度そのことについて親に話したことがあるので、ちょっと距離を置いて捉えられるようになりました。

 その傷ついた出来事をいつまでも見つめていても過去の出来事なので変えることは出来ず、今とこれからを生きていくときには、変えられないことばかり考えていても仕方がないですし、僕は決してあのようなことを自分の子どもたちにはしないと思っていたし、実際にしなかったので、まぁ、僕自身としては良かったかな、と思っています。
 ですが、傷はやはり傷で、深くえぐられた傷は、肉体描写で表せば、表面上、あるいは機能上何の問題もなく治っているのですが、傷跡として残っている状態です。
 まだその傷から血が流れているだとか、かさぶたになっているとかそういう時期は過ぎたけれど、そこには大きな傷跡が残っていて、大きな傷を負ったな、と一目で分かるようになっています。

 そして、この5巻目を読んでいて思ったのは、傷跡になったと思っていたものが、実はまだ中で軋んでいるというか、コリが残っているというか、そんな感覚になりました。
 で、この作品では、その深い傷を負った出来事に向き合い、立ち直っていく様子が描かれているのですが、そこで重要になる伴走者が自分にはいないな、ということを改めて突き付けられました。
 やはり誰かしら伴走者が必要なのだろうな、と。
 それは、支えてもらうとか、依存するとかでは決してなくて、自分自身が一人で立ってはいるものの、安心して戻れる場所としての人が必要だということです。

 人によっては、それが精神科医の場合もあるでしょうし、パートナーや家族、友人など、あるいは人間にそれを求めるのではなく、神というような存在に求めるなど様々あるかと思いますが、そういえば僕が子どもの時に親からされたことは誰にも話したことがなかったな、と今更ながら気づきました。
 なんとなく自分自身で解決しなければいけないと無意識のうちに思っていたのかもしれないし、すでに解決したと思いこんで(思い込もうとして)いたのかも自分自身でもわからないのですが、そういえば、誰にもこのことを話したことがなかったな、と、自分の中ではまだ誰にも話せないような出来事なんだな、と気づかされました。

 いつか誰かに話せるようになれば、その時、僕自身も少しは治癒していくのかもしれないな、誰かに話せる日が来るのかな、とそんなことを思いました。