映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

相田みつを『相田みつを ザ・ベスト にんげんだもの 逢』

 先日書いた益田ミリさんの『世界は終わらない』と同じく、古本屋で目に留まったので手に取った中の一冊です。
 相田みつをさんの詩って読んだことがあるようで(わりと好きなのは「人の為と書いていつわりと読むんだねえ」です)、一冊の本としては読んだことがなかったような気がするので読んでみました。

 


相田みつを ザ・ベスト にんげんだもの 逢 (角川文庫)

 

相田みつを ザ・ベスト にんげんだもの 逢 相田 みつを:文庫 | KADOKAWA

 

内容KADOKAWAより)
「つまづいたっていいじゃないか にんげんだもの」不安なとき、心細いとき、悲しいとき……人生によりそう言葉の数々を厳選した『にんげんだもの 逢』を、いまこそ読みたい内容にリニューアルした決定版。

勝手に五段階評価
★★★★☆

感想
 この文庫版は割と最近出版されたもので、東日本大震災後に編纂されことが相田さんの息子さんによるあとがきには書かれています。
 今回は相田さんの詩と書が載っているのですが、僕が一番良いなと思った作品を挙げてみます。

 

一番わかっている
ようで一番わから
ぬこの自分


 「その通り」というしかない言葉だな、と思います。
 けれど少し希望があるのは、「わからない」ということが「わかってきた」のが年を重ねてくる毎だということです。
 最初はわかっていたのにわからなくなってきたとすればかなりさみしい感じがしますが、自分のことをわかっていないということをわかってきたのは年を重ねる毎に深まってきている気がして、だからこそ、色々試行錯誤してみたりするわけで、それはそれで良いことなのかもしれないな、と思ったりします。

 他にも「いのちの根」という詩は(あえて載せませんが)、ちょうど仕事が最後の時期に読んだということもあり(最後何故か柔和になってきたと思ったら、やっぱり最後の最後も上司がマウント取ってきました…)、支えられるというか、何も言わず耐えることも自分にとっては何か必要なことなのかもしれないと感じました。

倉敷美観地区と大原美術館

 先日の後楽園と岡山城に続き、旅の話です。
 後楽園と岡山城に行った後、倉敷市に行きました。
(最初に岡山―福山の特急券を買っていましたが不要でした…。)

 今回の旅は事前に計画を立てる時間がなかったこともあり、参考にしたブログ(【6泊7日】中国地方(山陰山陽地方)一周の一人旅!旅のルートとプランまとめ | SmartParty.jp)以外本当に何も計画していなかったので、とりあえず書いてあった倉敷の美観地区に向かいました。 

 

f:id:ysdnbm:20191225182025j:plain


 上に載せたような町並み雰囲気が良かったのですが、美観地区を歩いていて驚いたのが、大原美術館があったことです。
 美術展で、大原美術館蔵という作品を何回か見てきたので、大原美術館の存在は知っていたのですが、まさかここにあるとは思いませんでした。
 ということで、美観地区を一通り歩いた後、大原美術館へ。
 

f:id:ysdnbm:20191225182014j:plain

  一番有名な作品でもあり、一室使って展示されていたのは、エル・グレコの「受胎告知」でした。
 他にもゴーギャン、モネ、セザンヌロートレックドガルノワールロダンといった西洋美術作家の作品だけでなく、日本美術も豊富で、他にも陶芸やオリエントのものなど豊富な作品群と共に、何故大原美術館が出来たのか、それと共に、児島虎次郎の存在も大きいことが分かり、僕は児島虎次郎を知らなかったのでとても興味深かったです。

 特にこの時は全く予想もしなかったことですが、旅の後半でここで見た陶芸作品の作家の作品群に再度触れることになり、(オフシーズンの平日ということもあり)ゆっくり、たっぷり時間をかけて見られて良かったです。

 その後は、そこから尾道へ。
 尾道のゲストハウス(みはらし亭)に泊まりました。
 ここでもオフシーズンということもあり、6人部屋に一人というとてもラッキーな環境でした。

「海を駆ける」

 何でチェックしていたのか全く覚えていないのですが、多分新聞の映画評を読んで、ウォッチリストに入れていた作品です。

(評・映画)「海を駆ける」 謎の男、旧作と違う存在感:朝日新聞デジタル


 Amazonプライムで観られるようになったので観てみました。

 


海を駆ける


作品データ映画.comより)
監督 深田晃司
製作年 2018年
製作国 日本・フランス・インドネシア合作
上映時間 107分
配給 東京テアトル
映倫区分 G

あらすじシネマトゥデイより)
貴子(鶴田真由)は息子のタカシ(太賀)とインドネシアに移住し、 NPO法人で災害復興の仕事に就いていた。ある日、貴子の自宅で息子の同級生クリス(アディパティ・ドルケン)と、その幼なじみでジャーナリストを目指しているイルマ(セカール・サリ)が取材を行っていたところ、身元不明の日本人らしき男性が見つかったという連絡が来て……。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★☆☆

感想
 すごく失礼ですが、殆ど刺さるものはなく、インドネシアを舞台にしていること以外は目立った印象は持ちませんでした。

 主役の鶴田真由インドネシア語も出来るのか、と思って観ていて、息子役のタカシが上手なので、どこから連れてきたインドネシア系の役者なのかと思ったら、太賀でした。
 彼の演技をあんまりじっくり見たことはなかったこともあり、全然太賀だと気づかず、エンディングクレジットを見てびっくりしました。

 他に、ディーン・フジオカが謎の男役を演じていますが、彼の存在がなんなのか、何を示したいのか、結局最後までよくわかりませんでした。

 なんだか全然感想が思いつかない作品で、それはすごく失礼なのだと思うのですが、良くも悪くもなく、本当に特に何も感想が思いつかない、太賀の演技が本当にインドネシアと日本とのダブルだと感じるような上手だったな、という作品でした。

後楽園と岡山城

 今日で仕事納めという人も多いかと思いますが、僕は無事に(?)退職し、有休消化を兼ねて旅に行ってきました。
 ちょうど1週間行ってきたのですが、当初は、1日1日のことをそれぞれ1つの投稿として書こうと思っていたのですが、色んな所に行ったので、せっかくなのでゆっくり紹介してみようと思います。
(なので、当分訪れた旅先の投稿が続きます。)

 今回行ったのは、中国地方です。
 最初は、大学時代の友人が暮らすタイに行こうと思っていて、友人に連絡したら、まさにその期間、日本に帰国中とのこと…。
 タイに行ったことがないので、行ってみたかったのですが、ではどうするかということで、行ったことのない中国地方に行ってみることにしました(岡山県広島県は通ったことはある)。

 ということで調べてみたら、1週間で中国地方を回ってみたという記事を見つけたので、それを参考に行ってきました。

【6泊7日】中国地方(山陰山陽地方)一周の一人旅!旅のルートとプランまとめ | SmartParty.jp


 僕は旅に出る前日が最終出勤日、そして忘年会&歓送迎会だったので、上に載せたサンライズエクスプレス(夜行列車)は無理だと判断し、とりあえず早朝に家を出て新幹線で岡山へ。
 岡山駅みどりの窓口に行き、上に載っていた乗車券などを参考に見せると、熱心にルートを考えてもらい(JR西日本の山本さん)、無事に乗車券と特急券を購入しました。
 ちなみに、参考にした記事と同じく、JR西日本株主優待券を購入していたので、この時点ではかなり安く(11,010円)済みました。
(が、当日時間に合わせて特急券が必要になったり、逆に不必要になったりしたので、これより高く払っています。
 それについてはその都度書いていきたいと思います)。

 
 岡山県みどりの窓口で乗車券&特急券を購入後まず訪れたのは後楽園と岡山城です。
 岡山城と後楽園は隣接しているので、まずは後楽園へ。

ホーム/後楽園

 

f:id:ysdnbm:20191225172846j:plain

 

 東京在住期間がいつの間にか人生の半分くらいになった自分にとって、後楽園といえば東京ドームのあるところだったのですが、本場岡山の後楽園に行くことが出来ました。
 今回の1週間の旅を振り返っても思うことですが、僕は日本庭園が好きなんだな、と思いました。
 というか、日本庭園は海外にない独特の世界観があるな、と。
 他の国や地域にはない世界観があって、僕はその世界観が好きだなと改めて感じました。

 後楽園を訪れた後、目の前にある岡山城へ。

歴史を伝える城 - 岡山城

 

f:id:ysdnbm:20191225172842j:plain

 
 特に城に興味があるわけではないのですが、今回の旅でなんだかんだでかなりの数の城を巡ることになりました。
 岡山城自体はどうだったかというと、バカと煙はなんとやらということで、とりあえず登れるものは登る(海外でも…)スタンスの自分は、特に何も考えず、岡山城も登りました。

 あんまり城自体に興味がない僕としては、今まで訪れた他の城と変わらないな、とも思ったのですが、1つ特徴的だったのは、金の鯱です。
 天守頂上からの眺めは言うことはありませんが、金の鯱って割と珍しい感じがします。
 そして良かったのは、交通系ICカードで支払いが出来たことです。
 旅先なので特に多くの現金を持ちたくない身としては、後楽園&岡山城交通系ICカードで支払い出来たのは良かったです。

益田ミリ『世界は終わらない』

 先日、ふと古本屋さんに寄りました。
 あんまり時間がなかったのですが、とりあえず100円コーナーに行ってみて、気になる作品を手に取った中の一冊がこの益田ミリさんの『世界は終わらない』です。
 あとでレビューを眺めていたら評価が分かれていたのですが、その理由は単行本では『オレの宇宙はまだまだ遠い』というタイトルだったのが、文庫化の際にタイトルが変わり、それが1度買っていた人の反発を買ったようです(説明文もなかったようで)。
 僕は割と益田ミリさんの本を読んでいる方だと思いますが、『オレの宇宙はまだまだ遠い』は読んでいなかったので、良かったです。

 


世界は終わらない (幻冬舎文庫)

 

世界は終わらない | 株式会社 幻冬舎

 

内容幻冬舎より)
書店員の土田新二・32歳は、後輩から「出世したところで給料、変わんないッスよ」と突っ込まれながらも、今日もコツコツ働く。どうやったら絵本コーナーが充実するかな? 無人島に持って行く一冊って?1Kの自宅と職場を満員電車で行き来しながら、仕事、結婚、将来、一回きりの人生の幸せについて考えを巡らせる。ベストセラー四コマ漫画

勝手に五段階評価
★★★★☆

感想
 書店員の土田新二、32歳が主人公の漫画になっていて、日々考えていることや出会ったことなど描かれています。
 たとえばこんなシーンがあります。

 

うらやましいのとも
違う
ただ、
ただ、
オレの人生の意味ってなんなんだろうって
明日からもここに帰りつづける
オレの人生の意味って
なんなんだろうって
考える夜もある
な~んて

 
 振り出しというか、マイナスになった僕にとってはものすごくグサリと心に刺さってくるセリフでした。
 特に、土田は誰かの人生と比べてしまって、比べても仕方のないことだと分かっていても比べてしまうことがある、ということも描いているのですが、そんな葛藤というかちょっとした悩みを持つ土田の年収よりも低い収入で、子どもたちからも離れて暮らし、恋人もおらず、友だちもいない、初めて暮らす場所に引っ越し、新生活が待っている。

 正直、子どもたちと離れて暮らしていることが僕にとってはとてもつらく、今まで土曜日に授業公開があった時には行って、子どもたちに会ってきたのですが、今度の仕事は土曜日も仕事があるので、さらに会えなくなります。
 それを想像しただけで不安というかつらく、この1年半ちょっとの自分をなんとか支えていたものがなくなってしまう気がしています。

 そして、35(年明けには36)になることもあり、なんだかそういうことを延々と考えてしまいました。

 この作品では最終的に恋人も出来、ハッピーな展開になっていて、益田さんの作品自体はいつもとても良いな、と思い、今回も良かったのですが、「それに対して僕は…」と考えてしまいました。
 まぁ、引っ越しと新しい職場という新生活にただ不安がある、ということなのかもしれませんが。

 なんだか、うつをさらけ出してしまいましたが、良かったのは、主人公が書店員という設定ということもあり、沢山の本が紹介されていたことです。
 児童文学の名作から(でも僕は読んだことがない)、漫画など幅広く出てきたので、これ今度読んでみよう、という作品が出てきたのが良かったです。

小さなデザイン 駒形克己展

 TwitterだったかInstagramだったか忘れたのですが、流れてきたものの中に、板橋区立美術館で開催中の「小さなデザイン 駒形克己展」に行ってきた人の写真が流れてきました。
 その写真が良かったのと、引っ越しで東京から離れるので、江戸東京たてもの園に続き行ったことがない、板橋区立美術館で開催ということなので行ってきました。
 

小さなデザイン 駒形克己展 | 板橋区立美術館

  

f:id:ysdnbm:20191212175825j:plain


 行ったのが平日の夕方近くだったということもあり、来館者が少なく、ゆっくりと観ることが出来たのがよかったです。
 板橋区立美術館には初めて行きましたが、今年の6月に建て替わったばかりのようでかなり不便な場所にありましたが、外観も中もとても良い雰囲気でした。

  駒形克己さんの作品は福音館書店から出ている絵本(『ごぶごぶ ごぼごぼ』)などで観たことはあったのですが、逆に絵本以外は殆ど知らなかったので興味深かったです。

 

f:id:ysdnbm:20191212175828j:plain


 企画展のタイトル通り「小さなデザイン」が特徴的で、デザインでありながら触感を感じるような、思わず触りたくなるような作品が多かったのも興味深かったです。

「ワンダー 君は太陽」

 本になったときから気になっていた作品(『ワンダー』)が、本を読む前に映画になり、観ようとチェックしていたのが今回の「ワンダー」です。
 これは本当にたまたまなのですが、先日書いた「デッドプール」と同じように、自分の顔が醜いという醜形恐怖を扱った作品になっています。 

 


ワンダー 君は太陽(字幕版)

www.youtube.com

 映画『ワンダー 君は太陽』公式サイト - キノフィルムズ


作品データ映画.comより)
監督 スティーブン・チョボウスキー
原題 Wonder
製作年 2017年
製作国 アメリ
上映時間 113分
配給 キノフィルムズ
映倫区分 G

ストーリー(公式サイトより)
 10歳のオギー・プルマン(ジェイコブ・トレンブレイ)は、普通の子には見えない。遺伝子の疾患で、人とは違う顔で生まれてきたのだ。27回もの手術を受けたせいで、一度も学校へ通わずに自宅学習を続けてきたオギーだが、母親のイザベル(ジュリア・ロバーツ)は夫のネート(オーウェン・ウィルソン)の「まだ早い」という反対を押し切って、オギーを5年生の初日から学校に行かせようと決意する。
 夏休みの間に、オギーはイザベルに連れられて、校長先生に会いに行く。先生の名前はトゥシュマン(マンディ・パティンキン)、「おケツ校長だ」と自己紹介されて、少し緊張がほぐれるオギー。だが、「生徒が学校を案内するよ」と言われたオギーは動揺する。
 紹介されたのは、ジャック・ウィル(ノア・ジュプ)、ジュリアン(ブライス・カイザー)、シャーロット(エル・マッキノン)の3人。いかにもお金持ちの子のジュリアンはオギーに、「その顔は?」と聞いてきた。オギーは毅然とした態度をとるが、帰宅してからは元気がなかった。だが、イヤならやめてもいいと言いかけるイザベルに、「大丈夫、僕は行きたい」と答えるのだった。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★★

感想
 見た目は慣れる、という意見もありますし(「デッドプール」でのセリフ)、僕もそう思いますが、やっぱり見た目はヒトにとって関係を構築するに当たってとても重要な要素であることは間違いないと思います。
 それは、歴史をたどれば、ハンセン病患者への差別に見て取れますし(感染力はものすごく低いにも関わらず、その「見た目」からものすごい差別を受け、今も苦しんでいる方々がいます)、現代でも「見た目」が仕事に大きな影響を与えてることが分かります(参考:女性の容姿への「残酷な心理実験」の結果が示す社会のひずみ(中野 信子) | 現代ビジネス | 講談社(1/4))。

 
 27回もの手術を受け、それまでホームティーティングで過ごしてきたオギーが5年生になって(日本の感覚では中1)、初めてパブリックスクールに通い始める、というものです。
 周りの生徒たちは、最初から、例えば保育園や幼稚園から一緒だったならまだしも、5年生になっていきなり現れた「他者」、そしてその「見た目」に注目せざるを得ない「他者」(オギー)に注目します。
 そして、何かや誰かと比べずにはいられなかったり、「醜い」ということを「負」という価値観でしか観られない子どもたちにとって、すぐにいじめの対象となります。

 それでも学校に通うオギー。
 その中で変わっていくクラスメイトたちとの関係。
 そして、家族もそれぞれ変化していきます。
 親友にしかその存在を教えていなかった姉のヴィア。
 オギーのホームティーチングで自分のことが出来なかった母親のイザベル。

 この作品で、僕が印象に残ったセリフは、オギーが通う学校の校長が言うセリフです。

オギーは見た目を変えられません
我々の見る目を変えなくては

 日本でも割と有名なものなので知っている人もいるかと思いますが、神学者ラインホールド・ニーバーという人の「ニーバーの祈り」というものがあります。
 その中に、「変えることのできないものを静かに受け入れる力を与えてください」という文章があります。
 見た目、というか、自分ではない他者の何かを変えることは自分には出来ません。
 その他者というか、周りを変えようとするのではなく、変わるとすれば自分自身だということを伝えているのがこの校長の言葉だと思います。

 それでも、それが分かっていてもやっぱり自分自身のことを変えることは難しいのですが、それが分かっていても変わっていける、ということを(子どもだけではなく大人も)描いていて、とても良い作品だな、と感じました。