映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

『サマーウォーズ』に見る、家事労働のむごさ

ニュース以外はあまりTVは見ないのですが(映画を観るためにTVを使ってます)、先週の「金曜ロードショー」では『サマーウォーズ』がやっていました。

なんとなく、名前は聞いていたし、一部の人たちが騒いでいたので、(映画は好きなので)どんなものなのか、と思って、見てみました。

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僕が(勝手に)想像していた内容とは全く違ったので、良い意味で裏切られて、それなりに楽しく観させてもらいました。

が、同時に、Twitter上でも感想とかが流れていて、ちょっとそれらを眺めていたら、ある意味想像通り(?)の反応がありました。

それは、「大家族最高!という感じで描かれているけれど、嫁の気持ちや実際の働きを分かってるのだろうか」というもの。

サマーウォーズを田舎の大家族の嫁の視点で観たら

僕はいわゆる「田舎」はなく、「嫁」でもないのですが、「大家族」出身(母親が10人きょうだいの末っ子)で、割と『サマーウォーズ』内の「大家族集結」という設定に近い集まりもあります。

そして、いわゆる「嫁」ではないものの、いろんな意味で「嫁」に限りなく近い存在でもあるので(「いろんな意味」の説明はあえてしませんが)、「嫁」の気持ちや働きが共感できたりします。

サマーウォーズ』に関して、「嫁」視点でどのような指摘があったのかは、上記のリンクを読んでもらいたいのですが、僕が共感したのは、この映画を作れるのはあくまでも「男性」だということです。

「ごく当たり前」に並んでいる料理やその後の片付けをするのも、嫁たちがやっていたりします。

男性は、単に食べて飲んで騒いでいれば良いわけですが、嫁たちは食べて飲んでいれば良いわけではなく、家事労働や育児をしたりしています。

さらに、今回は「大家族が集結した」というものなので、「ごく当たり前の生活を送ること」自体がものすごく大変なことだったりするのですが、この映画では全く描かれていないのです。

もちろん、映画の本筋から逸れてしまうということもあるのでしょうが、食事のシーンだけを見ても、「この立派な料理をどうやって用意したんだろう?」とか、「片付け大変そうだな」とか、「風呂の用意もしないといけないのか…」とか、僕も実際に気になりました。

映画を観ていると、それらがまるで「当たり前過ぎてないかのように」物語は進んでいくので、「生活感」がまるでないのです。

それに、これも指摘されていましたが、「嫁たち」の発言がネガティブに捉えられるように映画では描かれているのもちょっと気になりました(「男たちは良いよね」的発言)。

でも、家事労働などをさせられている「嫁たち」にとっては、当たり前の発言だと僕は思いました。

その発言をネガティブに捉えるのは、やはりあくまでも(普段から家事労働などは殆どしていなかったり、していても「手伝い」というポジションにいる)男性などの視点なのだろうな、と。

まぁ、家事労働だけ考えてもこんな感じだったのですが、大家族が集結すると、人間関係も複雑というか、やっかいなことになるので、「こんな【絆】とか言ってられねーし」というような気持ちになるわけですが(当然、合わない人もいるわけで。それがおじさんやおばさんだったら、なされるがままだったりします。)、そういうのも描かれていないので、「こんな世界もやっぱり仮想だよなー」とか思ってしまったのでした。

この映画を女性(というか家事労働を担っている人)で大家族出身者がリメイクしたら、どんな作品になるんだろうか、とふと思いました。