映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「日本で一番悪い奴ら」

気象庁が異例の豪雨による事前の記者会見を行い、既に20万人に避難勧告が出ている中でも国会議員たちが議員会館で飲み会を開き、被災地の日本酒をあおり、翌日には二日酔いで首相も使い物にならず、死者が50名以上になった66時間後にようやく非常災害対策本部を設置するという出来事がありました。
東日本大震災の時は、28分後に設置)

 

東日本大震災だけでなく、西日本でも人災により非常に多くの方が亡くなったので、これ以上悪い奴らはいないような気もするのですが、「日本で一番悪い奴ら」というタイトルに惹かれて、どんな人物が出てくるのか気になり、観てみました。
今回もAmazonプライムです。

 

日本で一番悪い奴ら

 

youtu.be

 

映画『日本で一番悪い奴ら』 | 大ヒット上映中!

作品データ映画.comより)
監督 白石和彌
製作年 2016年
製作国 日本
配給 東映、日活
上映時間 135分
映倫区分 R15+

ストーリー
(公式サイトより)
大学時代に馴らした柔道。その腕っ節の強さを買われ、北海道警・刑事となった諸星要一(綾野剛)。強い正義感を持ちながら、うだつの上がらない日々を過ごしていた。ある日、署内随一の敏腕刑事・村井(ピエール瀧)から刑事の“イロハ”を叩き込まれる。
それは「刑事は点数。点数稼ぐには裏社会に飛び込み、S(スパイ)をつくれ。」というものであった。言われるがままに“S”を率い、規格外の捜査に突き進む諸星だが――。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
この作品、一定の年齢以上の人は記憶にある人もいるかと思いますが、2002年に明らかになった北海道警察の不祥事ということで報道され、逮捕された中心人物である、稲葉圭昭元警部が服役後に書いた本を元にしています。
 

恥さらし 北海道警 悪徳刑事の告白 Kindle版

 
作品の最後にも触れられていますが、結局この問題は、北海道警察全体、つまり組織の問題ということにはされず、稲葉元警部1人に責任がある、ということで、道警の組織改革などは行われず、道警の逮捕者も稲葉元警部だけだったということもあり、稲葉事件という名前が付けられていることから分かるように、1人が起こした事件ということになっています。

稲葉事件 - Wikipedia

物語の内容は、柔道の強さを買われて北海道警察に採用された諸星が配属先の先輩から教えられた刑事の「イロハ」をこなしていく内に、捜査対象と警察官との境界線が曖昧になっていく様子を描いたものです。
覚醒剤の販売を手助けしたり、見逃したりすることはあっても、決して覚醒剤に手を出さなかった諸星が、ついに自らも使用することになる。
この覚醒剤に手を出した時が、それまで曖昧だとしても確かに存在していた、警察官と捜査対象という境界線を完全になくす場面だったと思います。

「日本で一番悪い奴ら」というタイトルには、逮捕起訴され、仲間も失った諸星のことだと理解することも出来ますし、逮捕されず、責任も問われなかった道警関係者のことかも知れません。

しかし、いずれにしても「日本で一番悪い」というのはいささか過剰なタイトルかな、と思います。

けれど、他の国(特にアメリカ)では、こういうマフィアと捜査官が癒着し、最終的に1人だけ責任を取らされる、というような話が明るみに出たり、映画になったりしていますが、日本では珍しいのではないか、と思います。
そういう意味では、意味のある映画のような気がします。

ならば、稲葉元警部側の主張によるものだとしても、事実を基に描いているのなら、主人公や関係者の名前を中途半端に変えたりすることなく、また、諸星が新入りの時から面倒を見てくれていた由貴がその後どうなったのかなど、ラストの字幕ででも記して欲しかったと思います。

それにしても、警察官とヤクザとは紙一重だとよく言われていると思いますが、諸星をを観ている限り、ただ柔道が強い、というその腕力一点だけで採用され、その後裏社会と深く付き合っていく様子を見ると、柔道がなければ、そもそも諸星も裏社会にも取り込まれていたようにも思います。
明確に正義と悪を分けることが出来ない、という現状をよく示しているようにも感じました。

また、主演の綾野剛ですが、顔のむくみ具合だとか、老け具合だとか、役作りをちゃんとしていて好印象でした。