映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「水曜日のエミリア」

 主夫だった以前程ではないものの、割と限られた人としか関わることのない生活をしているので、パートナーや子どもがいる人と恋愛関係になる、という出来事を自分のこととして感じた経験がありません。
 「不倫だ!」とか騒ぐ以前に、そもそもそんな関係になりそうな出会いもないので、どこでそんな出会いがあるのだろうか、とも思うのですが、不倫じゃなくても、出会いの場というのは職場というものがやはり多いのでしょうか。

 と気になったので、調べてみたら、国立社会保障・人口問題研究所の調査が出てきました。

第15回出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)|国立社会保障・人口問題研究所

 夫妻が出会ったきっかけを見てみたら、「職場や仕事で」28.1%、「友人・兄弟姉妹を通じて」30.9%、「学校で」11.7%でした。
 また、18~34歳の未婚者だと、「職場や仕事で」男性18.5%・女性21.5%、「友人・兄弟姉妹を通じて」男性20.7%・女性20.9%、「学校で」男性27.8%・女性23.7%でした。

 付き合う時は学校で出会った人で良いけれど、結婚となると職場など仕事で出会った人が多くなるというのが、興味深かったです。
 どおりで映画でもドラマでもエンタメニュースでも仕事場で出会った人たちとの不倫だとか結婚が多いわけだ、と納得しました(結婚のきっかけで職場や仕事が増える、ということは不倫のきっかけにもなっているということが読み取れる)。

 今回の作品はまさにこの調査結果の通り、職場での出会いによる不倫、結婚の物語です。
 


水曜日のエミリア (字幕版)


水曜日のエミリア | 映画 | 日活

作品データ映画.comより)
監督・脚本 ドン・ルース
原題 Love and Other Impossible Pursuits
製作年 2009年
製作国 アメリ
配給 日活
上映時間 102分
映倫区分 G

ストーリー(公式サイトより)
心ときめく恋、永遠の愛を誓い合う結婚、子供の笑い声が響く家庭ー女性なら誰しも、その全てを手に入れたいと願うのは当然のこと。新人弁護士のエミリアも、ごく普通の幸せを求めただけだった。しかし。彼女の場合、最初のボタンを掛け違った。既婚者の上司に恋をしてしまったのだ。 エミリアの妊娠をきっかけに離婚が成立した相手と結婚したものの、世間の見る目は“略奪女”。以来運命が彼女に配るカードはどれも不運ばかり。週の半分をいっしょに過ごす夫の息子は、決して心を開かない。エリート医師の元妻は、エミリアの子育てを厳しく監視し、何かと小言を言ってくる。とどめは、愛する夫との間に生まれた赤ちゃんの突然死だった。追い詰められたエミリアは娘の死にまつわる“秘密”を告白すると、愛する家族との絆はぷっつりと切れてしまう。家を出る決意をするエミリア。しかし、そんな家族を再び結びつけたのは、ある意外な人物だった…。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 日本語タイトルや公式サイトに載っているストーリーなどの紹介文から想像する内容とは違って、人間の悲しみ、その悲しみを抱えつつ歩んでいく姿を丁寧に描いた良い作品でした。

 作品の表紙では誰だか分からなかったのですが、主人公エミリアを演じるのは「ブラック・スワン」でアカデミー賞をはじめ、数々の賞を受賞・ノミネートされたナタリー・ポートマンでした。
 このナタリー・ポートマンが、結婚に至るまでの出会いや出産、その後数日で訪れる娘の死、その後も続く夫や継子との関わりという、喜びや悲しみを抱えたり、継子と探り探り関わりを深めていく様子をとても上手に演じていました。

 自分が生んだ子どもがすぐに亡くなってしまったのは自分が不倫をしたからなのか、とか自分に何か落ち度があったからなのではないか、という考えはとても理解出来ます。
 また、これは文化と言って良いのか分かりませんが、僕の現実の生活を振り返っても、多様なルーツで成り立っている地域の人たちは、特に話をすることやスキンシップを重んじていると思うのですが、それでも伝えていなかった思い、というものがある、ということもすごくリアルな出来事のように感じました。

 継子のウィリアムはもっとわがままを言ったり、怒りをぶつけたりしても良いと思うのだけれど、エミリアが悲しみの中にいることも感じているから、ぶつけることはない。
 ぶつけることもないのだけれど、それは距離を保ったままということなので、近づくこともない。

 その近づくことも離れることもない関係の中で少しずつお互いが現実を受け入れ、前に進もうとする。

 本題ではないのですが、2人が交わす会話やエミリアの本音が面白かったです。
 ハーバードに関する考えだったり、コロコロ変わる雰囲気や髪型を違和感なく演じているナタリー・ポートマンが「美人がフラレる映画って嫌い」と言ってのけたり。
 
 ラストで、一旦関係を断ち切ることを決断した2人が修復に向かう、ということは予想外でしたが、敵対するかのように接していた者同士が、他の大切な誰かを大切にしようとする行為によって、その相手に大きな力を与えることが出来る、というのはとても良い展開でした。

 こんなに優しく接することが出来たら、また、敵対していても、その優しさを素直に受け入れることが出来るって、とても素敵なことだな、と思いました。