映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「ラストタンゴ・イン・パリ」

 結婚はこりごりだけど、恋人というかパートナーがいるっていうのはやっぱり良いよな、と最近思うようになってきました。
 うつの症状も安定してきた、ということなのでしょうか。

 今僕が暮らしている家の近所にはレンタルDVD屋さんはないのですが、TSUTAYAディスカスで旧作が88円だったので、先日紹介した町山智浩さんの『トラウマ恋愛映画入門』に紹介されていた作品をいくつか借りて観ました。

 

ラストタンゴ・イン・パリ オリジナル無修正版 [Blu-ray]

 

作品データ映画.comより)
監督ベルナルド・ベルトルッチ
原題 Last tango in Paris
製作年 1972年
製作国 イタリア・フランス合作
上映時間 129分

あらすじWikipediaより)
パリ・パッシーのアパルトマンの空室でうらぶれた中年男(マーロン・ブランド)とブルジョア系の若い娘ジャンヌ(マリア・シュナイダー)は単に部屋を探していた身であったが、間違って掛かってきた電話の男に刺激され、男はジャンヌを犯す。ジャンヌにはれっきとしたTVディレクターのトム(ジャン=ピエール・レオー)という恋人が居たものの、アパートで会う時は互いにただのオス・メスとして行為に更ける。やがて、実は男の妻が最近自殺したばかりだという暗い過去が明らかに。男はジャンヌを牝の肉玩と見なしていたが、次第に2人の立場が逆転していき男が中年の醜い姿を晒した時、二人の間の肉欲の関係は終わりを告げる。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★★

感想
 
1972年公開当時は、製作国のイタリアで「猥褻」だということで、主演のマーロン・ブランドマリア・シュナイダーが逮捕されたという大きな騒動になったようですが、僕はこの作品自体を知りませんでした。

 観終わったあとに調べてみたら、逮捕された、ということだけでなく、こんな記事も出てきました。

www.huffingtonpost.jp

 
 また、オリジナルは250分もあるそうですが、「無修正版」となっているものの、僕が見たのは130分ほどのものです。
 「無修正版」と言っても性器が映っているということはなく、映っていてもヘアだけなので、それだけで、40年の歳月を感じることが出来ます。
 ちなみに、「レイプシーン」ですが、確かに「同意」の元にセックスしているシーンではないのですが、それまでセックスし続けている二人が、「すべてを受け入れる」とまで言っている中で始まるアナルセックスを「レイプ」と断罪してしまって良いのか、正直自分にはよく分かりませんでした。
 もちろん、1度同意したとしても、それは2度目を同意したことではない、ということ、すべてを受け入れる、といってもアナルセックスを受け入れた訳ではない、ということも分かるのですが、AVのように実際に挿入したりするわけでもないので、(傍目から見ると、うつ伏せの女性に男性が乗っかり、腰を動かしている。)、「レイプ」という言葉に戸惑いを感じてしまいました。

 さて、物語としては、妻を自死で亡くした中年男性が、たまたま出会った若い女性とセックスだけの関係に興じるようになり、素性も明かさずにセックスだけを求める関係でいたものの、次第にその若い女性のことを深く愛するようになるが、そのときには既にその女性は男性への愛や興味を失っている、というものです。

 妻が自分も知っている相手と不倫をしていたことが分かり(しかも同じ洋服まで着させている)、妻が自死したこともあり、乱暴に扱っていた女性に対して、彼の要求すべてを受け入れてくれた女性を実は自分は愛している、といことに気付き、伝えるものの、女性はそのときには既に彼への気持ちは少しもなく、むしろ恐怖でしかない、という男女のすれ違いをとてもうまく描いていました。

 男だから、とか女だから、とか区切って考えることには普段かなり疑問を持っているのですが、1度決めてしまった心を変えさせることは出来ず、決めてしまった心を自分では変えることが出来る、でも、あくまでも変えることが出来るのは自分であって、どんなにそれまで好きだった相手からの言動でも、他者の意思では変えることが出来ない、という人間の本質が描かれていると思いました。