映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「海辺の生と死」

 公開当時気になっていた作品がAmazonプライムで観られるようになっていたので、見てみました。 


海辺の生と死

 

youtu.be

 

映画『海辺の生と死』|2018年2月7日Blu-ray&DVDリリース


物語(公式サイトより)
昭和19年(1944年)12月、奄美 カゲロウ島(加計呂麻島がモデル)。国民学校教員として働く大平トエは、新しく駐屯してきた海軍特攻艇の隊長 朔中尉と出会う。朔が兵隊の教育用に本を借りたいと言ってきたことから知り合い、互いに好意を抱き合う。島の子供たちに慕われ、軍歌よりも島唄を歌いたがる軍人らしくない朔にトエは惹かれていく。やがて、トエは朔と逢瀬を重ねるようになる。しかし、時の経過と共に敵襲は激しくなり、沖縄は陥落、広島に新型爆弾が落とされる。そして、ついに朔が出撃する日がやってきた。母の遺品の喪服を着て、短刀を胸に抱いたトエは家を飛び出し、いつもの浜辺へと無我夢中で駆けるのだった・・・。

作品データ(映画.comより)
監督 越川道夫
製作年 2017年
製作国 日本
配給 フルモテルモ、スターサンズ
上映時間 155分
映倫区分 G

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★☆☆

感想
 この作品が公開された当初、気になっていた理由としては、主演の満島ひかりが今までより更に踏み込んだ体当たりの演技をしているという点も大きいものでした。
 確かに、裸になるシーンがあったり、荒波の中に入り込んでいったりと体当たりの演技だとは思います。
 けれど、裸のシーンも、この作品の流れで出てきても良いはずのセックスシーンではなく、身を清めるシーンで、それはそれで必要なシーンかも知れませんが、愛する人を思い続ける狂気みたいなものはあまり伝わってきませんでした。

 愛する人を思い続ける狂気なんてものをなぜ持ち出すのか、というと、この作品は、実在の人物、島尾ミホ島尾敏雄夫妻の出来事を元にしているからです。
 登場人物の名前は変えられていますが、エンディングクレジットでも、島尾ミホ『海辺の生と死』 (中公文庫)島尾敏雄『島の果て』 (集英社文庫)を底本にしていることは明確にされています。

 島尾夫妻に関しては、二人のこれまで発表された作品からも、島尾敏雄島尾ミホ以外の女性と関係を持った際に取ったミホの行動などが作品から伝えられていて、そこには愛する人を思うが故の狂気みたいなものが溢れています。

 この映画では、二人が出会った最初の頃を描いているので、その後結婚してからさらに深まる「狂気」みたいなものが、最初からあるわけではないとしても、その片鱗がもっと伝わって来ると良いな、と感じました。
 島尾敏雄をモデルとした朔中尉が特攻兵としていよいよ出陣する、という場面で取った島尾ミホをモデルとしたトエの行動にはその片鱗が見えるのですが、逆に言えば、それ以外の部分では、二人の関係が深まっていく様子をもう少し描いて欲しかったかな、と思いました。

 奄美加計呂麻島をモデルにしたカゲロウ島の言葉や踊り、歌など、当時の様子を残したり、知るという点では興味深い場面もあったのですが、逆にそれが物語を長くして、二人の関係への注視が薄まっている感じがして、残念でした。