映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「ヒア アフター」

 クリント・イーストウッド監督作品は結構観ていると思っていたのですが、観ていなかったので、観てみた作品です。
 


ヒア アフター (字幕版)

 

【ワーナー公式】映画(ブルーレイ,DVD & 4K UHD/デジタル配信)|ヒア アフター

 

作品データ映画.comより)
監督 クリント・イーストウッド
原題 Hereafter
製作年 2010年
製作国 アメリ
配給 ワーナー・ブラザース映画
上映時間 129分
映倫区分 G

 

あらすじシネマトゥデイより)
霊能力者としての才能にふたをして生きているアメリカ人のジョージ(マット・デイモン)、津波での臨死体験で不思議な光景を見たフランス人のマリー(セシル・ドゥ・フランス)、亡くなった双子の兄と再会したいイギリスの少年マーカス。ある日のロンドンで、死に取りつかれた3人の人生が交錯する。

 

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 日本での公開が2011年だったということで、冒頭に大規模な津波シーン(2004年にあったスマトラ島沖地震をモデルにしていると思われます)があるので、ワーナーの公式サイトでは東日本大震災へのお見舞いの言葉が載っていますが、作品中に津波が関係していることは全く触れられていません。

 8年経った今でもこの冒頭のシーンは衝撃的で、2011年の日本での出来事を思い出すと共に、2005年には、YMCAのプログラムでスリランカで被災し、家族や家を失った子どもたちと一緒に過ごすプログラムでスリランカに派遣された経験があるので、どうしてもそれを思い出さずにはいられませんでした。

 冒頭のシーンは辛いものですが、物語の中心はタイトルの「ヒアアフター("Hereafter”)」=将来や未来、来世のことを表しています。
 字幕ではHereafterを「来世」と訳していましたが、内容的には身近な人を失ったり、自分自身が臨死体験をしたことで今後どう生きるか途方に暮れ、戸惑っている人がこれからどう生きていくかを死者との対話を通して見つけていくというものでした。

 興味深かったのは、信仰する宗教や暮らしている地域や国が違っても、臨死体験や死者との交信といったものが、この映画で描かれている、フランス、イギリス、アメリカと日本とで大きく違わない、ということです。
 僕自身には臨死体験はありませんが、死者と話をする霊能者(というか媒介者)とのやり取りだったり、負の側面で言えば、死者とやり取りをしたいという人への適当なビジネスがはびこっている様子も宗教も文化もまるで違う日本と共通していました。

 そして、身近な人が亡くなって、言い残したこと、聞きたかったことを強く願う人たちが沢山いることはわかりますが、それと同時に、それを媒介する人にとっては、逆にそれが苦しみになる、ということです。
 知りたくもない他者のことを知ってしまい、自分自身が抱えてしまう。
 これは相当な負担なはずで、映画でも少し触れられていますが、中には精神疾患と判断されてしまったり、実際に精神的に病んでしまうこともあるでしょう。

 クリント・イーストウッドの作品というと、「ダメな人間」を描くのが特徴だと思っていたのですが(それが良いところ)、この作品ではクリント・イーストウッド自身は出演していないからか、「ダメな人間」というものは出てこず、むしろ「再生」という側面が大きかったのがとても良かったです。