映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

荻上チキ、ヨシタケシンスケ『みらいめがね それでは息がつまるので』

 いつも(ラジオクラウドで)聞いているラジオ番組Session22のパーソナリティを務める荻上チキさんの新刊が出るということで予約して買いました。
 チキさんの本は今までもいくつか読んできたものの、予約購入してまで読んだ理由は、共著者がヨシタケシンスケさんだったからです。
 僕はヨシタケシンスケさんのファンで、ヨシタケさんの新刊絵本が出る度に買い、子どもたちと一緒に読んでいましたし、サイン会にも行ったことがあります。
 内容については全く知らなかったのですが、チキさんとヨシタケさんが組み合わさったら読まずにはいられない!ということで予約して購入し、すぐに読みました。
 


みらいめがね それでは息がつまるので

 

暮しの手帖社 | みらいめがね それでは息がつまるので

 

内容暮しの手帖社より)
気鋭の評論家荻上チキさんと大人気絵本作家ヨシタケシンスケさんの共著。『暮しの手帖』の好評連載が1冊にまとまりました。本書は、荻上さんのエッセイとヨシタケさんのイラストで、ひとつのテーマを二人の視点から解き明かす新感覚エッセイです。生きづらさにつながる「~すべきだ」「~らしく」という言葉や、もやっとした不安。『みらいめがね』は、そんな思いにとらわれた心をほぐし、世の中を見る目を変えていきます。連載時の15話に加えて、ヨシタケさんの傑作あとがきマンガが付いています。

勝手に五段階評価
★★★★★

感想

 僕は普段買う本は基本的に自炊(電子化)して、タブレットで読んでいるのですが、この本はその作業さえ面倒なので、購入後すぐに紙の状態で読み始めたのですが、紙のまま読んで良かったです。
 何故かというと、手元に紙の本として残したいと思う内容だったからです。
 どんなことが書かれているのかというと、上に載せた暮しの手帖社の紹介にあるように、チキさんのエッセイに、ヨシタケさんのイラストが載っています。

 出版された直後の番組(【音声配信】「荻上チキ復帰!ヨシタケシンスケさんとの共著『みらいめがね』発売!▼2019年5月24日(金)放送分(TBSラジオ「荻上チキ・Session-22」))で番組パートナーの南部広美さんがおっしゃっていたように、チキさんとお母さんとの話は、チキさんとお母さんとの和解(のようなもの)の話でありつつ、女性の「ガラスの天井」の話でもあり、個人が抱えている課題が社会と密接に関わっているということを優しい文章で書いたとても優れた文章だと感じました。

 また、チキさんがうつ病を患っていることから、それに絡む話も載っていて、「人生病、リハビリ中」というエッセイでは、「何かに依存するのを無理にやめるのではなく、むしろ依存先を増やすことによって分散することが重要なのだ」ということは「『理屈では』とうに知っていた」けれど、「いざ自分が、『当事者』となった時、そのあまりの重圧に驚いた」という文章は、心の底から「そうなんだよ」と思いました。

 「『呪いの言葉』に向き合う」というエッセイは電車の中で読んでいたのですが、思わず涙が出てきました。
 通勤電車内ではなかったのでまだ良かったのですが、そのエッセイには、チキさんが「呪いの言葉」にどう向き合ってきたか(向き合っているか)だけではなく、「『自分は参っている』と打ち明け始めた」ことが書かれていました。
 僕もようやく去年になって、自分が参っていることを親や友人に伝えることが出来るようになりました。
 そのときのことがツーっと自分の中で沸き起こってきたのかもしれません。

 ここまで書いてきたことだけの紹介だと固い話ばかりのように感じるかもしれませんが、かつて僕も聞いていた「ツインビーパラダイス」(ラジオ番組)の話だとか、(チキさんとはほぼ同世代なので)僕自身もすっかり忘れていた当時のことを思い出し懐かしく感じるものや、就職と今の仕事にどうやってつながってきたかなどの話も勝手にチキさんに抱いていた「すごい人」像を壊してくれると同時に、僕もなんとかやっていけるかもしれないなと感じるものでした。

 これからもチキさんのエッセイをどこかで読めると良いな、と切に願っています。