映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

樹木希林『この世を生き切る醍醐味』

 先日、何かの折りに樹木希林さんに関する記事を読みました。
 

dot.asahi.com

 
 生前、朝日新聞の記者がインタビューした様子が書かれていて、樹木さんは「本にはしないで」と言っていたけれど、出版することになった、とのことでした。
 樹木希林さんの『一切なりゆき』を読んだばかりだったこともって、興味がわいて読んでみました。


この世を生き切る醍醐味 (朝日新書)

 

朝日新聞出版 最新刊行物:新書:この世を生き切る醍醐味


内容朝日新聞出版より)
とても母らしいです。美談じゃなく、ダメなところも書いているから。
――娘・内田也哉子さん (インタビューも収録)
樹木希林はなぜあれほど平気に死んだのか読み継ぐべきラスト・ロングインタビュー
この浮世をぞんざいに生き切る覚悟。
あらゆる出会いや運命に感謝する心のもちよう。
病や死すらおもしろがる透徹した視点。
樹木希林さんの言葉一つひとつがお手本だ。
そして娘・内田也哉子さんが初めて語る最期の日々、内田家の流儀、未来に受け継ぐ「母の教え」とは――。

勝手に五段階評価
★★★★☆

感想
 『一切なりゆき』との違いは、3日間にわたるロングインタビューをまとめたものであること、そして後半最後には娘の内田也哉子さんへのインタビューが載っている点です。
 『一切なりゆき』は樹木希林さんがこれまで色んな所で語った中でも印象的な言葉を集めたものですが、この本は樹木さんが自分の人生、そして、質問に対して答える中で出演してきた作品を語る内容になっています。

 率直に、この本を読んでの感想は、物足りない、ということでした。
 インタビューは3日間に及んだとのことですが、樹木さん本人が本にすることを望まなかったのは新聞に3回に渡って連載されるということもあったのだと思います。
 樹木さんが、本にすることを前提に語っていたら、もっともっと語っていたように思います。

 僕は樹木さんの語っていた内容というのを『一切なりゆき』で初めて知り、それが興味深かったので、この本を読んだのですが、正直もっともっと、その時どのように感じていたのか、何故そのようなことをしたのかということを詳しく知りたいと思いました。
 例えば、舌禍事件とされている久世光彦さんとの出来事は避けられていたり、本木雅弘さんとのこと、孫たちのこともあまり語られていません。

 なので、印象に残ったのは、娘、内田也哉子さんへのインタビュー内容です。

「自分が美しいと思えない生き方はしたくない」っていうことだったんでしょうね。良いとか悪いとかじゃなくて、あくまで自分の尺度ですべてを決めて突き進んでいたんだなっていう……。
 つらければつらいほど、周りの人へのシンパシーというかそういうものが増幅する人なんじゃないかとも思いました。「お母さん、今、そんなにつらいんだから、自分のことだけで十分よ」って時でも、まだ人の心配してましたから。そういう質なんでしょうねえ。

 
 「自分が美しいと思えない生き方はしたくない」とか、「つらければつらいほど、周りの人へのシンパシーというかそういうものが増幅する人」とか、あぁ、こういう部分に僕は『一切なりゆき』で惹かれて、そして、これからそういう生活を送りたいな、と思ったんだよな、と。
 人と比べない生き方というのは中々大変ですが、自分の好きなものを大切にしたり美しいと思える生き方というのを大切にしていきたいな、と改めて思いました。