映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

橋本治『橋本治のかけこみ人生相談』

 何で目にしたのか気になったのか自分でまるで思い出せなくて、調べたら出てきました。
 歌人東直子さんによる新聞の紹介欄でした。
 文庫なのでいつか読もうと思いチェックしていたのでした。

 

book.asahi.com

 


橋本治のかけこみ人生相談 (幻冬舎文庫)

 

橋本治のかけこみ人生相談|橋本治 - 幻冬舎plus

内容幻冬舎plusより)
「自分はあんまり幸福じゃない病」にかかったら、たまにはバカになるのも手……愛と感動の人生指南。幻冬舎plus人気連載「かけこみ人生相談」が文庫化。

勝手に五段階評価
★★★★☆

感想
 普段は人生相談的なものはあまり読まないのですが、チェックしていたことから既に人生に悩んでいたのだと思います。
 で、実際に手に取ったのは、かなりメンタルをやられていたからです(ちょっと脱してきましたが)。
 元々橋本治さんのエッセイは好きと言ってしまって良いレベルなのかはわかりませんが、初めて本を読みましたが、新聞や雑誌にコラムが載っていると必ず読んでいました。

 この本は、幻冬舎plusでの連載、というかタイトルそのままの人生相談とそれへの橋本さんの返答が集められています。
 自分には特に二つの文章が心に残りました。

 あなたがなくしてしまった、あるいは新しく増やすことが出来なかった最大の感情は、「なにかを好きになる、好きになれる」というものです。物であっても、人であっても、行為であっても、「自分はこれが好きだ」と思えれば、幸福感が生まれます。人間にはそれが必要なのです。
 子供の時のあなたは、豊かな感情とかなり高い能力をお持ちだったはずです。だから、「なんでも一人で出来る」と思って、それをこなしてしまった。その結果、「なにかを好きになる、好きになれる」という能力が、退化したか、成長しなかったのです。
 幸福感がないから、一人で考えるとつらくなる。だから、それを忘れさせてくれる酒の方についつい手を伸ばしてしまう。今のあなたに必要なのは、アルコールがもたらしてくれるフェイクな幸福感ではなくて、「なにかを好きになる」という感情を取り戻すことですね。
 まず、「自分はなにが好きなんだろう? なにだったら好きになれるんだろう?」ということをお考えになるよう、おすすめします。もちろん、それが簡単に見つかるとも思いません。「好きになる」ということは、「その対象から助けてもらう」ということで、自分以外のものに頭を下げることも必要です。もしかしたら、あなたの中ではそういうことも忘れられているかもしれません。「自分はなにが好きか?」の答はそう簡単に出て来るものじゃありません。

 
 僕は、うつの所為なのかも思い出せないくらい、「好き」とか「楽しい」とか、そういう感情というか気持ちがいまいちわからなくなっています。
 とにかく今いる職場は「楽しくない」し、「特に好きでもない」ということはわかるものの、「じゃあ、何が好きなの?」とか「何をしている時が楽しいの?」と言われると困ってしまいます。
 映画を観て、本を読んで、漫画読むのは好きだからしている気もしますし、こうしてブログを書いているのも誰かの反応はもちろん嬉しいのですが、「書くこと」自体が好きなような気もします。
 けれど、それらをしている時に幸福感があるかというと、いまいちわからないというか、自信がないというか。

 それに対して、次の文章がすごく心に残りました。

「幸せそうな人聞はみんなバカだ」なんてことを言ってしまうと、とんでもない悪口のように聞こえるかもしれませんが、「バカ」になっていられる時、人は幸福感を味わっているものなのです。「バカになっていられる」ということは、「余分な心配をなにもしなくてすんでいる」という状態にあることなのです。「ああ、なんにも考えなくていいんだ!」と思ったら、幸福でしょ?もしかしたらあなたは、そんな風に考えたことがないので「そんなバカな」とお思いかもしれませんが、実は「バカ」になれた時、人は幸福なのです。誰彼かまわず抱きついてゲラゲラ笑っている酔っ払いのことを考えて下さい。周りの人間は別として、それをやっている酔っ払いは幸福で、人は「幸福でいられるバカ」になりたくて、酒も飲むのです。だから、あなたが《幸せそうな人》と思う人達は、みんな「バカ」なのです。

 
 「ゲラゲラ笑っている酔っ払い」という表現や、実際に「人は『幸福でいられるバカ』になりたくて、酒も飲む」という指摘が本当に的を射ていると感じました。
 その「ゲラゲラ笑っている酔っ払い」のような状態を一つ一つ集めていって、その点と点がつながっていけば、幸福感を感じることが出来るのかも知れないな、と思いました。
 まだ、「ゲラゲラ笑っている酔っ払い」のような状態になることは中々ないのですが、それでも「あぁ、楽しいな」と思える時が少しずつ出来て来たので、その一つ一つの気持ちを大切にしていけば良いのかな、と思っています。