映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「モバイルハウスのつくりかた」

 Twitterを見ていたら、坂口恭平さんを撮った映画がAmazonプライムで観られるようになっているということを知ったので観てみました。
 ちなみに坂口さんがどんな人なのかということを、紹介するのはとても難しいのですが、早稲田の建築学科を出た建築家なのですが、僕が最初に知ったのは、この映画のタイトルとも共通する『0円ハウス』という本です。
 何故知ったのかというと、坂口さんは建築を勉強しながらも、その内容は路上生活者の家を建築学的に調査したレポートだったからです。
 僕はちょうどそのくらいのころから路上生活者の方たちと関わらせてもらっていて、それを「建築」という視点で見ることにとても新鮮さを感じました。
 その後、震災があって熊本に避難し「新政府」を立ち上げたり、躁鬱病双極性障害)であることを公表しつつ、「いのっちの電話」と名付け、自分の電話番号を公表し、相談にのったり、小説を発表したりしているのですが、とりあえず、その坂口さんの特に東日本大震災前後の活動の様子を切り取ったドキュメンタリー映画です。

 


モバイルハウスのつくりかた

 

youtu.be

 

坂口恭平、初のドキュメンタリー映画『モバイルハウスのつくりかた』


作品データ映画.comより)
監督 本田孝義
製作年 2011年
製作国 日本
配給 戸山創作所、スリーピン
上映時間 98分

内容(公式サイトより)
建てない建築家・坂口恭平 初のドキュメンタリー
「建てない」建築家がいる。———名前は坂口恭平
「0円ハウス」「ゼロから始める都市型狩猟採集生活」といった著作で現代のライフスタイルに問いを投げかけ、故郷の熊本につくった“ゼロセンター”で新しい生き方を模索する。
坂口さんは早稲田大学建築学科在学中に路上生活者の家と出会い、家について、都市について、生活について根本的に考えることを始めた。
なぜ、建築家は巨大な建築物を建てるのだろう? なぜ、私たちは身の丈に合った巣のような家を建てることが出来ないのだろう?
数々の著作で路上生活者の生活をレポートしてきた坂口さんは、2010年11月、ついに初の建築作品“モバイルハウス”の製作にとりかかる。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 Amazonのレビューを眺めると、このドキュメンタリーが撮られた時期(2010年前後)だとか、坂口さんの歩みを知らずに、ここ数年で割とセルフビルドとか、タイニーハウスとかで、自分の家を自分で作る、ということが浸透しているので、「目新しくもないわ」みたいな意見が書いてありますが、間違いなく、坂口さんは今の情況の前にセルフビルドとかタイニーハウスを始めていたことを考えて観るべきだと思います。

 また、レビューで酷評する意見を読んで思ったのは、ちゃんと内容見たのかな?ということです。
 坂口さんが注目したのは、一見見向きもされず、むしろ煙たがれている存在である野宿生活者(ホームレスと呼ばれる人たち)に注目し、その人たちが持つ経験や技術が、実は「色んなものを持っている」と思っている自分たちよりも「豊か」であるということを示そうとしたことです。

 それが既存の「建築」だったり、「野宿者」たちへの考え方を覆すものになっているのです。
 だから、坂口さんは注目されたし、こうしてドキュメンタリー映画になってもいるのです。

 タイトルの「モバイルハウスのつくりかた」という点で言えば、2011年の時点では相応しいタイトルだと僕は思います。
 先に書いたように、それ以降「タイニーハウス」や「セルフビルド」の本が沢山出てきたので、今自分でタイニーハウス、セルフビルドで自分の家を作ろうとすれば、他にも参考になる良書は出ていますし、ほぼセルフビルドすることが可能な支援をしてくれる会社もあります。

 なので、あくまでもこの作品は2010年前後の坂口さんの取組だということを念頭に観るべきであって、そうすると、やっぱり既存の建築への疑問だとか、野宿生活者から学ぶことが沢山あって、むしろ、色んなものを持っていると思っている自分たちの方が(今年の台風や大雨のように)ちょっとした出来事で一気に生活が困窮してしまうという弱さを抱えているということを浮き上がらせている、優れた内容になっています。