映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

雁須磨子『あした死ぬには、』1

 毎週楽しみにしている購読している新聞の書評。
 僕が買えるのは新書や文庫、あるいは漫画などの価格帯のものになりますが、書評を読むだけで、世の中には色んなことがあって、色んなことを探求したり、考えている人がいるということ自体、とても楽しんでいます。
 最近は、結構ストレスフルな情況になり、うつの症状も悪化してきたのか、ちゃんと文章が読めなくなってきてしまいました。
 そんな時でも読めて、懐にも比較的優しい漫画は、僕にとっての大きな支えです。
 今回は、そんな情況で新聞の書評欄に載っていた漫画です。
 

book.asahi.com

 

あした死ぬには、/雁須磨子 - Ohta Web Comic [太田出版のウェブ漫画]

  


あした死ぬには、 1

 

あした死ぬには、 1 - 太田出版


書籍の説明太田出版より)
歳をとるのは怖いですか?
~切実に生きる女子たちの心に寄り添い、そっと背中を押してくれる本。~
20代ほどがむしゃらじゃない。
30代ほどノリノリじゃない。
40代で直面する、心と身体の変わり目。立ちはだかる40代の壁。
突然の病気、更年期障害、取れない疲労、働き方の変化、お金の不安、これからの人生プラン……
私のあしたはどうなるの!
本奈多子(ほんな・さわこ)、42歳、独身。
映画宣伝会社に勤め、ハードワークをこなす日々。
ある夜突然、心臓の動悸が止まらず、体が冷たくなって……。
もしかして私、更年期障害かもしれない!?
苛々したり、涙腺がゆるんだり、おばさんと言われて悲しくなったり。
心身の変化に戸惑いながら、迷いながら、私たちは、あしたを生きる。

感想
 僕は30代ですが、去年家族を失い、うつ病を再発し、いつ死んでもおかしくない情況にいます。
 最近では髪の毛だけではなく、体毛が白くなってきていて、確実に「老い」を感じています。
 女性のように「更年期」というような症状は出てきませんが、確実に「おじさん」になり、戸惑い、迷いながら日々を送っています。

 僕がこの作品を読もうと思った一番の理由はタイトルが『あした死ぬには、』だったからです。
 「老い」ということを抜きにして、僕は「あした死ぬ」かも知れないと思っているというか、今日ここで死ぬかも知れないという日常を過ごしています。

 通勤で使う電車の路線にはガードがないので、たまに飛び込みたくなるときがありつつもなんとか踏みとどまり過ごしています。
 「あした死ぬ」ということは、僕にとっては、彼岸にあるものではなく目の前にあるものです。
 荷物をなるべく少なくして過ごしているのももしかしたらそういう深層心理みたいなものがあるからなのかも知れません。
 僕が今日死んでも、片付けをしなければならない誰かに負担がかからないようにしたい。
 そして、出来れば子どもたちは笑っている時の僕だけを覚えていて欲しいし、少しでも彼らが生きていく時に役に立つものを残しておきたい。

 この作品で描かれる主人公は女性なので、それこそ「出産」という、僕のような男性の身体を持った者には理解出来ない不安や苦しみみたいなものがあると思います。
 だからそれについては僕も理解出来ているとは思えません。
 けれど、「あした死ぬ」かも知れない、という実感、そして、もし、これからも生き続けていけるとしても、今の収入で生きていけるのか、今はまだいる親が去った後一人で生きていけるのかという不安。
 「35歳の男性」に社会から求められているであろう「35歳の男性」像からかけ離れた自分が感じる不安やプレッシャー。

 まだ一巻目なので今後の展開がどう進むのかは分かりませんし、性別も年齢もたとえ違っても、「生きること」に少しでも不安を覚えている人には是非読んでもらいたい作品です。