映画と本と自分と山

映画が半分、残りは本と自分、時々山登りについて

「クワイエット・プレイス」

 観たいなぁ、と思っていた作品がAmazonプライムで観られるようになっていたので観てみました。
 観たいなぁ、と思ったのは、映画評論家の町山智浩さんがラジオ番組(赤江珠緒たまむすび)で紹介していたからです。

町山智浩 『ア・クワイエット・プレイス』を語る 

 


クワイエット・プレイス (字幕版)

 

youtu.be

 

映画『クワイエット・プレイス』DVD公式サイト|パラマウント

 

作品データ映画.comより)
監督 ジョン・クラシンスキー
原題 A Quiet Place
製作年 2018年
製作国 アメリ
配給 東和ピクチャーズ
上映時間 90分
映倫区分 G

ストーリー(公式サイトより)
音に反応し人間を襲う“何か”によって荒廃した世界で、生き残った1組の家族がいた。その“何か”は、呼吸の音さえ逃さない。誰かが一瞬でも音を立てると、即死する。手話を使い、裸足で歩き、道には砂を敷き詰め、静寂と共に暮らすイヴリン&リーの夫婦と子供たちだが、なんとイヴリンは出産を目前に控えているのであった。果たして彼らは、無事最後まで沈黙を貫けるのか─。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 ホラー映画という紹介がされていたので、その手の映画が苦手な僕はドキドキしながら観始めたのですが、面白かったです。
 音を察知して襲いかかってくる凶暴な生物が突如現れる。

 街からは人の姿が消え、その街の食料品店から食べられるものを持ち帰る途中、こっそり持ってきた音を出すオモチャを鳴らしてしまい、襲われる末っ子。

 そこからおよそ1年経ってからがこの作品のメインです。
 弟の死に責任を感じる聴覚障がいのある姉。
 出産を間近に控えたお母さんイヴリン。

 設定に対して、例えば何故こんな極限状況で妊娠・出産をしようとするのかや、妊娠したとしても、他の場所での出産に備えるなど、色々突っ込もうとすれば出来るのですが、飽きることなく、そしてホラー映画が苦手な僕でも目をそらさずにも観られるで良かったです。

 登場するイヴリン&リーを演じるジョン・クラシンスキーとエミリー・ブラントは実際にも(プライベートでも)夫婦で、それがこの家族を「ホンモノ」に見せているのかな、とも思いました。

長沼睦雄『10代のための疲れた心がラクになる本: 「敏感すぎる」「傷つきやすい」自分を好きになる方法 』

 自分がHSPだと分かってから、HSP関連の本を読むようになりましたが、今回は書籍で読んだのではなく、cakesでの連載が終わった(=読み切った)ので、感想を書いてみます。
 著者は以前紹介した『「敏感すぎる自分」を好きになれる本』と同じ長沼睦雄さんです。
 タイトルの通り10代向けに書かれてはいますが、心身の状態を確かめる方法や、リラックスさせるための具体的方法なども書かれていて、それが良かったです。
 

cakes.mu

 


10代のための疲れた心がラクになる本: 「敏感すぎる」「傷つきやすい」自分を好きになる方法

 

株式会社誠文堂新光社 / 10代のための疲れた心がラクになる本

 

内容誠文堂新光社より)
友だち関係、勉強、家族、容姿……ストレスは多いけれど、大丈夫! 君は変われる!
□ 心がざわつくこと、つらいことが多くて、イヤな気分に押しつぶされそう
□ 朝起きると「また一日が始まる」と、どんよりした気分になる
□ 笑うことができなくなっちゃった
□ 自分のことをわかってくれる人がいない、ひとりぼっちだと感じている
気がつけば、こんな状態になってしまっていませんか?
でも、大丈夫。
心がパンクしかけていても、自分で自分の心をセルフケアできるようになると、必ずラクになります。生きやすくなります。
大切なのは、知識、心構え(マインド)、行動(技術)、この3つです。
1) まず、「この状態はどういうものか。治す方法があるのか」といったことを知る。
2) 次に「よし、治すぞ」という心構えをもつ。
3) そして、治していくために必要な具体的な技術を知り、行動を起こす。
この3ステップです。
どうすることが自分自身をラクにするのか、心の声を聞いて、一歩踏み出せばいいのです。
行動に移せば、状況は変わります。
この本は、「敏感気質(HSP/HSC)」の第一人者でもある児童精神科医・長沼睦雄先生が、これまでの臨床経験を総動員して書きました。
前半は「知識編」、後半は「技術編」。
この本に書いてあることを、小さなことひとつでもいいから、何か実践してみてください。
きっと状況は変わります。
大人ももちろん、とりわけ、多感な思春期を生きる10代の方にこそ、ぜひ読んでほしい本です。

勝手に五段階評価
★★★★★

感想
 30代の僕でもとても大切だなと思った箇所をあげてみます。

 休むとはどういうことなのか。一度、整理しておきましょう。
 まずは、睡眠を十分とり、疲れをとること。10代なら、毎日8~10時間の睡眠が望ましいって知っていますか。
 それから、バランスのとれた食事を、3食しっかりとること。
 身体の緊張やこわばりをほぐして、リラックスさせること。
 そして、ストレスをなくして、心おだやかに過ごすこと。
 この条件をみたすことが、「休養する」ということなのです。


 最近、ずっとストレスフルな生活を送っていたこともあり、休むことにはかなり気を使ってきました。
 十分な睡眠、バランスの取れた3回の食事、身体の緊張をほぐしてリラックスさせ、ストレスをなくし、心おだやかに過ごすこと。
 最初のふたつ、十分な睡眠は薬の助けを借りて、食事はサラダ、果物、食物繊維、発酵食品を取れるように気を付けながら、ほぼ毎日同じものを食ています。
 身体の緊張をどうやってほぐしているのかというと、僕の場合はボルダリングです。
 ボルダリングを始めたときは身体をほぐすとかリラックスさせるということは考えてもいなかったのですが、結果的に、仕事で緊張しこりにこった肩や首がほぐれるようになりました。
 しかし、問題なのは、最後の「ストレスをなくして、心おだやかに過ごすこと」。
 これが一番難しいです。
 「ストレスをなくして、心おだやかに過ごす」ために、転職をするということ自体は決めたものの、次の仕事先が決まるまでは今の職場で働き続けなければならないので、どうしても「ストレスをなくして、心おだやかに過ごすこと」が出来ません。
 ストレッサーである上司との接触があると一気にストレスを感じるのですが、そういうときにどうしたら良いのか、具体的な対処法が書かれていました。
 ちなみに、そもそもいつそのストレッサーである上司から話しかけられるか分からないので仕事中は常にマスクをして、物理的に「壁」を作るようにしていますが、それでもものすごくストレスを感じます。

 普通に呼吸をしているときは、息を吸うとか吐くということをとくに意識していませんね。でも、ストレスを吐き出したいときには、大きく息を吸って、長く息を吐くのです。(中略)
 長く吐ききると、大きく息が吸えます。吐く息とともに、マイナスの感情が吐き出されていきます。悪いものをみんな吐き出したあと、新鮮な空気が体内にたくさん入ってくる。息の入れ替えが気持ちの切り替えにもなるのです。


 マスクという予防・防御はしていますが、それでもストレスを感じたら、「大きく息を吸って、長く息を吐く」。
 「深呼吸すると良いよ」ということはよく言われることで、僕も言われたことがありますが、「長く吐ききる」というのがミソかな、と感じます。
 とにかく、吐く。
 職場で誰かに言葉ですぐに愚痴れなくても、とにかく息を吐ききる。
 これを心がけるようになって、少しだけ楽になりました。
 マスクで予防・防御しつつ、ストレスを感じたら息を吐ききる。
 そうすると少しですがその時の「つらさ」が軽減されるように感じています。

 先日、僕はモノではなく人間でいたいということを書きましたが、そんな気持ちの時だったこともあり、とても勇気づけられたのがこの文章です。
 

「できなくても、これが自分」と受けいれて、そういう自分を隠さずに出せることが、本当の自己肯定感です。
 人は評価してくれなくてもいい、君自身が自分のことを認めてあげればいいのです。


 僕はお金として評価されなくても良いし、競争もしたくありません

 幸せというのは、だれかが与えてくれるものではありません。自分で「うれしい」「楽しい」と思えるものを増やしていくことで、手に入れられるものです。

 
 自分が「うれしい」「楽しい」と思えるものは何なのか。
 うつのせいなのかよく分かりませんが、とにかく分かるのは、今の職場は楽しくないということと、たまに誘ってくれる友人の開く飲み会は楽しく、そこで出会う人たちとの出会いもうれしいということです。
 そこで出会う人たちは様々な仕事をしているのですが、いわゆる会社員は僕くらいでほぼいません。
 子どもたちだったりの保育やいわゆる福祉に関わっていたり、何かを作り出している人たちです。

 僕は自分では何かを作り出す才能はないと思っているので、やっぱり他の友人にも言われたように子どもたちに関わる仕事が「楽しい」と思えるのかな、と思っています。

 さて、せっかく正社員として初めて雇ってもらえ、3月から働き始めたばかりなのに、もう辞めるの?と誰かに言われたわけではないのですが、そういう気持ちがあります。
 それについても、学校で働いていた時には生徒たちに「つらかったら逃げていいんだよ」「つらかったら学校に来なくても良いんだよ」と言っていたにも関わらず、僕自身が「逃げちゃいけない」と自分自身を縛っていました。
 けれど、やっぱり、生徒たちに言っていたように、つらかったら逃げても良いし、その場から離れて良いと背中を押してもらえました。

 つらいと感じているひとつの状況のなかには、「変えられない」部分と、「変えられる」部分とが混じっています。「変えられない」ことに対してマイナス感情を募らせても、それはつらくなるばかりです。

 

「変えられない」ことに悩むのではなく、自分で「変えられる」ことに意識を向ける。
 自分の意思や努力でできることは何か。これは「自分軸」をもつことで気づけることなのです。


 「ストレスをなくして、心おだやかに過ごす」ために、ストレスをなくして過ごしたいのですが、色々動いた結果、結局、ストレッサーである上司から離れることはできませんでした。
 そして、自分自身が商品として扱われるということはこの業種では当たり前のことだということで、それは「変えられない」部分です。
 なので、これはもうどうしようもないので、「変えられる」部分、つまり、今いる職場だけでなく、仕事から離れようと決心することが出来ました。

 まだ辞めたわけではありませんが、次の仕事を本格的に探しつつ、子どもに関わる仕事に就くための勉強を始めました。

「探偵はBARにいる3」

 Amazonプライムで観られる作品リストを眺めていたら、ずっと観たいと思っていた「探偵はBARにいる」の3が観られるようになっていました。
 僕はこのシリーズが好きなので、早速観てみました。 

 

 


探偵はBARにいる3

 

youtu.be

 

映画『探偵はBARにいる3』公式サイト

 

作品データ(映画.comより)
監督 吉田照幸
製作年 2017年
製作国 日本
配給 東映
上映時間 122分

 

ストーリー(公式サイトより)
【最高のコンビ】が迎える【最大の危機】。
悲しくも激しい【最後の事件】が始まった。
「恋人の麗子が失踪した」。高田の後輩からのありふれた依頼を安易に引き受けた探偵。早速調査に乗り出すと、探偵は麗子がアルバイトをしていたモデル事務所のオーナー・マリと出会い、かすかな既視感を覚える。しかし周囲を嗅ぎまわる探偵はマリの手下に襲われ、これまで無敗を誇った高田も倒されてしまう。次第に麗子の失踪の陰に、裏社会で暗躍する札幌経済界のホープ・北城グループの殺人事件が見え隠れする。マリはグループの代表・北城の愛人だった。そんな中、何かを思い出す探偵。なじみの元娼婦・モンローがかわいがっていた、今にも死にそうに震えていた女――「あれか…?あれがマリか…?」
緊張が走る裏社会、巨額の薬物取引、2つの殺人事件――。すべてはマリによる、北城をも欺く作戦であった。そしてマリは、探偵に最後の依頼を託す。その時、探偵と高田の別れへのカウントダウンが始まっていた。

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★★☆

感想
 今まで何故かブログには書いてないのですが(探してみたけれど記録がありませんでした)、「探偵はBARにいる」はとても好きな作品で、このシリーズの1作目を観たことで大泉洋が好きになりました。
 そして、「探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点」も1作目と同じく面白く、今回の3作目も楽しみにしていました。

 が、観始めて最初から動揺したのが、今回で終わるかのような展開。
 「このシリーズ終わっちゃうの?」と作品の内容よりもそれが気になってしまったのですが、結論から言うと、続くかも知れない余韻を残して終わります。

 自分が小さな時、「あぶない刑事」シリーズをテレビでやっていて、僕はそれがとても好きでした。
 その影響もあって、小さな頃は警察官になりたいと思っていました。
 が、その後「正義とは何か」「悪とは何か」とかを考えるようになり、逆に「正義」の名の下に働く警察官なんてとても考えられなくなりました。

 と、警察官への想いは良いとして、「あぶない刑事」シリーズのように、いわゆるバディものが結構好きなのは小さい時からだったなぁ、とふと思い出しました。
 「探偵はBARにいる」が好きな理由も、バディものでありつつ、「探偵」という「正義」でも「悪」でもなく、グレーな存在だからかも知れません。

 そして、今回の作品で気付いたのが松田龍平の演技の上手さです。
 大泉洋ばかり目が行っていましたが、松田龍平はホントに上手だな、と。
 なぜそう思ったのかというと、エンドロールが流れた後の最後の場面で見せる大泉洋演じる探偵と松田龍平演じる高田とのやり取りが、それまでと違っていたからです。
 最後の場面は素の松田龍平がかなり出ている感じがして、それを観たときに、あぁ、この人は今までこの素の部分をひたすらかくして(演じて)いたのだな、と分かりました。

 まだ続くこともありそうなので(大泉洋、松田龍平サプライズオファー『 探偵はBARにいる4 』製作決定!)、楽しみにしています。

瀬尾まいこ『そして、バトンは渡された』

 姫野カオルコさんの『彼女は頭が悪いから』樹木希林さんの『一切なりゆき』と同じ時に電子書籍だと50%還元セールの対象になっていたので、ポチった作品です。
 ちょうど本屋大賞を受賞したときだったのですが、それ以前から各所(主にラジオ)で書評を聞いていて、興味を持っていました。
 読んでみての感想というかどうだったかということを先に書くと、この小説を読んで泣きました。
 小説で泣いたのは高校生の時に読んだスティーヴン・キングの『グリーン・マイル』以来です(映画もとても良いです「グリーンマイル」)。
(単に年を取って涙腺が緩んできているのかも知れませんが…。それと、僕は小さい時から泣き虫です。)

 


そして、バトンは渡された

 

本屋大賞受賞!『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ・著 私には五人の父と母がいる。その全員を大好きだ。 | 特設サイト - 文藝春秋BOOKS

 
作品紹介文藝春秋より)
私には五人の父と母がいる。その全員を大好きだ。
高校二年生の森宮優子。
生まれた時は水戸優子だった。その後、田中優子となり、泉ヶ原優子を経て、現在は森宮を名乗っている。
名付けた人物は近くにいないから、どういう思いでつけられた名前かはわからない。
継父継母がころころ変わるが、血の繋がっていない人ばかり。
「バトン」のようにして様々な両親の元を渡り歩いた優子だが、親との関係に悩むこともグレることもなく、どこでも幸せだった。

勝手に五段階評価
★★★★★

感想
 最初に書いたように、高校生の時に読んだ『グリーン・マイル』以来、20年近く振りに小説を読んで泣きました。
 そもそもタイトルの「そして、バトンは渡された」という意味を分からず読み始めたのですが、読んでいくと徐々に分かるようになっていきます。

 文藝春秋のサイトに書いてある内容で既に内容がネタバレしていますが、主人公・森宮優子は様々な「親」の元で育てられてきました。
 血のつながった親、そこから様々な親の元で育てられ、そのたびに名字が変わっていく。
 親が何年か毎に変わるというと「かわいそう」だとか思ってしまいがちですが、そうではない優子自身が感じてきた想いや感じている想いを、誰にも読みやすい文体で描いています。

 優子の目線で物語のほぼ全体が描かれていくのですが、それは決して優子だけの人生を描いたものではないところが、この物語のすごさです。
 最初のお父さん(水戸さん)、次に育ててくれた梨花さん、次のお父さんとなる泉ヶ原さん、そして、現在の父親である森宮さん。
 それらの親たちの想いや人生も、優子を通しながら丁寧に描かれています。

 僕が泣いた点は、その親たちの「想い」が明らかになっていく所です。
 僕が親だからでしょうか。
 そして、離れて暮らす親だからでしょうか。
 さらに、いつ死ぬか分からない病気を患っている親だからでしょうか。

 それらの「親」の気持ちが優子のように、僕の子どもたちにも伝わる日が来れば良いな、と。

「バースデーカード」

 この作品も先日書いた「今夜、ロマンス劇場で」と同じ理由で、(かなりメンタルがやられていて、うつの症状で文章が頭に入ってこないので)日本語の映画が良いな、ということで選びました。
 この作品もレビュー数は「今夜、ロマンス劇場で」ほどはありませんが、Amazonプライムでの評価が高かったので観てみました。 

 


バースデーカード

 

Birthdaycard Movie | Official Site

 

作品データ映画.comより)
監督 吉田康弘
製作年 2016年
製作国 日本
配給 東映
上映時間 123分
映倫区分 G

ストーリーOfficial Siteより抜粋)
21世紀のキに、子どもと書いて紀子。いま、この時代に、確かに私という人間が存在した、という意味を込め、パパが付けてくれた名前です。
小学生時代のあだ名は「泣き虫のりこ」。引っ込み思案な性格で、クラス対抗のクイズ大会では、パパとママ、弟の正男と家族総出で協力してくれたのに、勇気が出せず一問も答えられませんでした。落ち込む私をいつも励ましてくれるのがママでした。優しくて、明るくて、そんなママのことが大好きでした。
このままずっと隣にいて安心させてくれる、と当たり前のように思っていました。10歳の誕生日までは・・・。
ママは病気に勝てず天国に行ってしまったのです。
ママと過ごす最後の年になってしまった10歳の誕生日。ある約束をしました。それは20歳を迎えるまで私たち姉弟に毎年手紙を贈ること―。
そして翌年、母がいない11歳の誕生日に、本当に手紙が届きました。
“11歳ののんちゃんへ これからのんちゃんが20歳になるまで、毎年手紙を贈るので楽しみにして下さい”

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★☆☆

感想
 この作品に対して高い評価を付ける理由は理解出来ました。
 若くして亡くなる母、その母が子どもたち2人に、それぞれが20歳になるまで毎年のバースデーカードを用意しておく。
 そのバースデーカードを読んだ長女・紀子を軸にして10歳から結婚するまでの十数年間を描いています。

 感動する人の気持ち、若くして亡くなること、小さな子どもを残して亡くなること、それでも何かを残そうそうとバースデーカードを残すこと。
 それを読み揺れ動く紀子の姿。

 けれど、実際に子どもたちが大人になるまでの手紙を書いたことがある自分としては、なんだか引いてしまいました。
 僕は、初めてうつ病になったとき、元配偶者に「死ぬなら、子どもたちに手紙を書いて」と言われ、書いたことがあります。
(自分から言ったのに、「書いたよ」と言ったら、元配偶者はかなり動揺していましたが…。)
 今でもその手紙は僕の手元にあります。
 その後、寛解し、まさかもう一度うつ病になるとは思っていませんでしたが、捨てることも出来ず、残しています。
 今はまたいつ死んでもおかしくない状態にいるような気もするので、残しておいて良かったとも思っています。

 で、何が言いたいのかというと、実際に同じようなことをした経験がある身としては、「感動ポルノ」的な物語の展開と内容に逆に引いてしまったのです。
 「これは泣けるでしょ?」と言われてるような。
 いや、マジ、死にそうな身としては、そんな余裕ないから。

 それと、ラストが「結婚式」というのも気になりました。
 かなりネタバレになっちゃうので詳細は書きませんが、「結婚式」をラストにすること自体がこの時代どうなのか、とか、恋人=彼氏(男性)となっていたり、なんだかそういうところもモヤモヤしてしまいました…。

人間でいたい

 ここのところメンタルが不調であることを度々書いてきました。
 「つらい」ということをちょこちょこと色んな人に愚痴るだけでなく、具体的な解決というか改善に向けて動いてもいたのですが、ストレスの原因である環境が変わることはありませんでした。
 そこで、本格的に新しい仕事を探すことにしました。

  去年の3月までは子育てもあり、元配偶者が全く家事をしないしない人だったことや、僕の専門分野があまりにも特殊なものだったので正規職を見つけることが出来ませんでした。
 去年、元配偶者から暴力的に家から放り出され、そこからうつの治療をしつつ、ダブルワークをこなし、資格を取ったりした結果、8年間続けていた教員ではない、全く違う業種、職種で正社員として雇ってもらえることになりました。
 35歳で、未経験という、どう考えても採用したくないような条件の僕を正社員として雇ってくれた会社にはとても感謝しています。

 けれど、今回のメンタルに不調を来たしている出来事について、会社の人と話した結果、分かったのは、自分はモノではなく人間だし、人間でいたい、ということです。

 

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 業種もちょっと言えないので、説明が難しいのですが、会社の上司たちと話して分かったのは、僕が一つの商品、モノとして捉えられている、という感覚です。
 僕という「モノ」は「○○」「△△」「□□」という資格を持った商品で、それによって価格が付けられ、それを売ったり取引することで生じる差額で会社が利益を得ているということです。

 僕に優しい言葉をかけるのはその商品としての「価値」があるからで、(同年齢水準での給与でかなり低いので)会社としては利益が沢山出るからなのだろうと。
 それにもの凄く違和感があるし、嫌だな、と。
 それを話したら、ある人には「それがサラリーマンなんじゃない?」と言われました。
 ということは、僕はやっぱりサラリーマン、ビジネスマンに向いていないのだろうと思います。

 では、8年間働いていた学校はどうか。
 8年間同じ私立中高で働いていましたが、元々僕は学校が好きではありません。
 実際、毎年生徒たちには最初の授業や夏休み明け(自死者数が多いので)には、無理して学校に通わなくても良いし、学校以外の場も学校を卒業していなくても生きていける方法があることを伝えていました。
 具体的な方法とか場所も説明していました。
 そして、8年間働いていて「やっぱり学校は嫌だな」という場面にも沢山出会いました。
 けれども、少なくとも、僕がいた学校では、成績がたとえ悪くても、一人ひとりをそれぞれの名前を持った人間として接していました。

 テストの点が良くなくても、「素行が悪い」とされていても、その生徒に価値があるとかないとかそういうことを考えることすらありませんでした。

 学校という場に戻る(戻れる)のかは分かりませんが、とりあえず、今のこの会社で、あるいはビジネスマンとして生きていくのは、自分には向いていないというか難しそうだな、ということが分かりました。
 そんな話をちょこちょこ話していたら、ある友人に僕には子どもと関わる仕事の方が良いのでは?と言われました。

 僕自身は子どもが好きという感覚は特にないのですが、自分の子どもたちを通して10年間、震災のあった日も含め毎日保育園に通っていました。
 引越もしたので何カ所かの保育園に通いましたが、保育園も一人ひとりをモノとか価値とかではなく、一人の人間として接する場だったな、と改めて気付きました。

 ということで、もうこの会社にいるつもりはない(いつ辞めても良い)し、ぼんやりとですが、自分のこれからの方向性が見えてきたと思ったら、少しだけ気持ちが楽になりました。

「今夜、ロマンス劇場で」

 字幕だと若干疲れるので(先日来書いていますが、精神的にやられていて、うつの症状で文字が頭に入って来ません)、日本語の映画でのんびり観られるものをと思ってAmazonプライムで観られる作品リストを眺めていたら、評価が高かったので観てみた作品です。 

 


今夜、ロマンス劇場で

 

youtu.be

 

映画『今夜、ロマンス劇場で』公式サイト

 

作品データ映画.comより)
監督 武内英樹
製作年 2018年
製作国 日本
配給 ワーナー・ブラザース
上映時間 108分
映倫区分 G

ストーリー(公式サイトより)
映画監督を夢見る青年・健司(坂口健太郎)が密かに想いを寄せるのは、通い慣れた映画館・ロマンス劇場の映写室で見つけた古いモノクロ映画のお姫様・美雪(綾瀬はるか)。今は誰も見なくなったその映画を、毎日のようにくり返し見ていた健司の前にある日奇跡が起きる。美雪が健司の目の前に突然現れたのだ。その日から2人の不思議な同居生活が始まった。
モノクロの世界しか知らない美雪にカラフルな現実世界を案内する健司。同じ時間を過ごす中で、2人は次第に惹かれ合っていく。しかし、美雪にはある秘密があった。現実の世界に来るための代償で、人のぬくもりに触れたら美雪は消えてしまうの。そんな中、美雪は映画会社の社長令嬢・塔子(本田翼)が健司に想いを寄せていることを知る。
好きだから触れたい、でも触れられない……。
この切ない真実に2人はどう向き合い、どんな答えを出すのか――

勝手に五段階評価(基本的に甘いです)
★★★☆☆

感想
 なんか、もの凄く沢山の人がレビューを書いていて、しかもそれも高い評価でしたが、僕にはあまりピント来ませんでした。

 ピンと来なかった一番の理由は、モノクロ映画から飛び出てくる美雪の言葉使いです。

 物語の内容そのものは「純愛」ってことで、まぁ良いとしても、健司と美雪の2人の言葉使いが最後まで違和感を拭いきれませんでした。

 モノクロ映画、お姫様の美雪が現実世界に飛び出てくるという設定なので、最初健司のことを「僕(しもべ)」と言い、本当に僕のように接し、話すのですが、2人ともが惹かれ合い、気持ちが通じ合っていることが分かった後も美雪の健司への言葉使いは最後まで変わりませんでした。

 それが僕にはどうしても受けいれがたいものでした。
 パートナーだったら、パートナーとして認め合ったのなら、僕(しもべ)ではないのですから、接し方だけでなく、言葉使いも変わるはずです。
 どんなに綺麗で惹かれる人で、その相手からも好きだとか言われても、こんな言葉使いをされたまま数十年も過ごすなんて僕には非現実的でした。
 それは、映画の中から現実世界に飛び出てくること以上に僕にとっては非現実的でした。

 美雪を演じる綾瀬はるかというかその衣装も綺麗ですし、様々な場面もカラフルで印象に残るのですが、「純愛」っぽく描かれれば描かれるほど、逆にパートナーに対する言葉使いの違和感が膨れ上がってしまいました。